存続模索する「近江鉄道」 大阪直結の新線構想は起死回生策となりえるか?
鉄道事業の現状と経営努力
近江鉄道は、本線である米原~貴生川間47.7km、高宮~多賀大社前間の多賀線2.5km、近江八幡~八日市間の八日市線9.3kmという、3つの路線を営業。全線が電化されており、西武グループの会社であることから、電車は元西武鉄道の中古車両を2両編成でワンマン運転をしている。
だが主要駅である近江八幡や八日市、彦根でも、1日当たりの乗降客数は、2500人にも満たない。高速バス事業や、ドル箱である南草津駅~立命館大学びわこ草津キャンパス線といったバス事業など、他の部門では利益が出ているが、それだけでは鉄道の赤字を埋めるには足りず、沿線自治体が財政支援を行っている。
少しでも鉄道事業を活性化しようと、新駅の設置以外に、各種企画乗車券を発売して、利用者を増やす努力を行っている。代表的な企画乗車券が「1デイスマイルチケット」であり、年末年始を除く金曜・土曜・日曜・祝日に近江鉄道全線が1日乗り放題になる。価格は900円だ。
八日市以南から近江鉄道を利用して、米原で東海道新幹線などに乗り継ぐ際に利用できる「米原乗り継ぎ往復きっぷ」も販売している。この企画乗車券は、米原から八日市以南を往復する際にも利用が可能であり、有効期間は発売日より3日間である。
さらに信楽高原鉄道と提携した「びわこ京阪奈線フリーキップ」があり、土曜・休日に1日乗り降り自由となる乗車券が毎年度、大人1050円、子ども530円で販売されている。
その他、さまざまな利用者層を開拓しようと、「ビール電車」「ワイン電車」「地酒電車」などのイベント電車を運転して、通勤・通学・通院以外の需要創出を実施。これらのイベント電車は、現在はコロナ禍のため実施を見合わせているが、2022年11月19日に東近江市で開かれたワークショップでは「近い内にイベント電車の運行を再開させたい」との社長発言があった。