秩父が好例! 鉄道会社こそ「次世代まちづくり」の主役だ 地域巻き込み、持続可能性目指せ
交通機関と旅、そして観光まちづくりへ

歴史的に見ても、観光の発展には、交通機関の発達が大きく影響を及ぼしてきた。その最初はイギリスの蒸気機関車の運行だった。そして、大型客船、ジャンボジェット機と、短時間で長距離を移動できるようになり、多くの人が旅に行けるようになった。つまり、交通機関と旅が切っても切れない関係にあったことは周知の事実だろう。
そうした中で、最も私たちに身近な交通機関は鉄道会社ではないだろうか。鉄道会社は、交通手段を提供するだけでなく、その目的地の魅力度を向上する事業を各沿線で行っている。例えば、目的地となる場所でのリゾート開発やホテル開発といった観光地開発から、駅ビル再開発や駅ナカ開発などによって、駅利用率の向上を図っている。そうした中で、現在の鉄道会社を中心としたグループ企業は、拠点開発的な事業だけではなく、観光まちづくりといった地域づくりにも参画するようになった。
今回は、西武鉄道をはじめとした西武グループ会社の一つであり、グループ保有の資産を活用して不動産開発事業を担っている西武リアルティソリューションズが行っている、埼玉県秩父市での取り組みを紹介する。
これまでの秩父の主な地域資源
秩父観光の拠点となる西武秩父駅には、都内池袋駅から西武鉄道の特急Laviewを利用すると1時間20分ほど到着する。他にも秩父鉄道の秩父駅が利用可能だ。秩父は都内から日帰りで比較的手軽に訪れることのできる観光地の一つといえるだろう。
そんな秩父の代表的な地域資源、観光資源として、自然が挙げられる。長瀞(ながとろ)や芝桜の丘(羊山公園)などがあり、四季折々の自然の豊かさを感じることのできる観光地になっている。
また、もう一つの代表的な資源として、アニメコンテンツの聖地が挙げられる。その作品は、通称「あの花」で知られている「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」や通称「ここさけ」の「心が叫びたがってるんだ。」などで、これらに関連するイベントには、多くの人が訪れる。
秩父は都内から手軽に行ける場所と先に述べたが、実際に、筆者(清水麻帆、地域経済学者)が、秩父でアニメの聖地巡りを行っている人に対して行ったアンケート結果(2018年8月1日~9月17日実施)では、アンケート回答者147人のうち、関東からの訪問者が全体の約78%を占め、来訪の交通手段は、自家用車が最も多く、全体の約50%、次いで多かったのが電車の利用者で約40%を占めていた。また、日帰りが全体の約63%、次いで多かったのが1泊2日で19%と、訪問者の多くが日帰り客だった。
こうした結果からも、特に幅広い世代の関東近郊の人たちにとって、気軽に日帰りで行ける場所の一つであるといえるだろう。