秩父が好例! 鉄道会社こそ「次世代まちづくり」の主役だ 地域巻き込み、持続可能性目指せ
近年の観光開発
そうした中で2017年、西武グループが、西武秩父駅に直結した「西武秩父駅前温泉 祭の湯」という複合温泉施設を開発した。この施設は、温泉だけでなく、フードコートやお土産品店なども併設している。
こうした施設は駅直結で利便性も良く、秩父の魅力の一つにもなり得る一方で、駅直結ということもあり、駅周辺の中心市街地に立地する商店街などへの回遊性を低下させる恐れがある。そうなると、地元経済への経済効果が小さくなるだけではなく、中心市街地自体の衰退を加速してしまう可能性も出てくるだろう。
観光地である秩父において、西武鉄道にとっても地域にとっても、持続可能な観光やその振興を維持していくことが重要課題であるのは変わらないだろう。そうした場合、開発事業者は、地域と共に地域課題を解決するような観光まちづくりを行っていく必要がある。それによって、街の魅力が高まり、結果として目的地への鉄道利用者や施設利用者などの増加につながる。では、どのように、秩父の中心市街地の魅力を向上すればよいのだろうか。
新たな文化資源の創出

実は、秩父の市街地は元々門前町であったことから、歴史や文化という資源がある。そうした歴史を背景に発展してきた街の文化を観光資源の一つとして生かす開発事業が、西武グループ(西武リアルティソリューションズ)やまちづくり会社のNOTE、秩父地域おもてなし観光公社、そして三井住友ファイナンス&リースの4社によって計画が進められ、秩父のまちづくりを目的とした会社「秩父まちづくり」によって運営されている。2022年8月には、中心市街地にカフェやレストランを併設する分散型宿泊施設「NIPPONIA 秩父 門前町」が開業した。
NIPPONIA秩父 門前町は、西武秩父駅に近く、中心市街地に位置しているため、周辺には商店街や既存の店舗も多い。そうした場所で、文化財としても登録されている「小池煙草店」とそれに隣接する「宮谷履物店」、「マル十薬局」といった歴史的建造物をリノベーションし、宿泊施設として利活用することで、それらを新たな文化資源にした。これまでの自然やコンテンツという観光資源に、新たに文化が加わることになったのだ。