秩父が好例! 鉄道会社こそ「次世代まちづくり」の主役だ 地域巻き込み、持続可能性目指せ
鉄道と地域の連携へ
「NIPPONIA」という取り組みは、秩父だけでなく、函館(北海道)や篠山(兵庫県)、出雲大社門前町(島根県)などで行われているが、その特徴は何かというと、先述したように、古民家などの昔ながらの建物を利活用し、再生させ、その土地の歴史や文化を再生・継承させることを、地域の人々と共に行っている点だ。そのため事業者には、地域に根付いた事業の実現や地域活性化への貢献などを求めている。
秩父のケースも同様で、秩父で開発した施設が地域に根付いた施設になるように地域を巻き込んで、観光振興を行おうとしている。それは主に次に挙げる点からも示されているだろう。
・宿泊施設の従業員は地元の人材を採用・活用
・施工も地元の設計事務所や工務店に依頼
・飲食の食材は地元産のもので、地元業者や店舗から仕入れる
・地元酒蔵の酒などを提供
・地元の職人が制作したガラス食器などを使用
このように、古い建物をリノベーションするだけでなく、地域を巻き込むことによって、地域経済の循環にも貢献するようデザインされている。こうした地域の人々を巻き込んだ観光まちづくりの動向は、他の空き家の解消につながると同時に、中心市街地の商店街活性化も期待できるものになるだろう。
加えて、経済的な効果を創出するだけではなく、歴史的建造物と共に地域の人々の経験や歴史、文化を継承し、未来へと紡ぐことは、市民のシビックプライドの醸成にもつながる。そのことは、結果として地域の魅力を向上させ、観光との相乗効果を創出することに貢献するだろう。
このように、観光資源の層を厚くし、地域の魅力を高めることは、観光客を引きつけ、ひいては、鉄道利用の促進につながる。これまで、鉄道は目的地まで人やモノを運ぶ交通手段であり、そのグループ企業は沿線の住宅開発やリゾート開発が主流だったかもしれないが、秩父のような取り組みが持続可能な観光振興につながるとすれば、今後の鉄道系企業は地域との連携が、より求められることになるだろう。