ドイツ国防軍の名将「ロンメル」 彼はなぜ第2次大戦「北アフリカの戦い」に負けたのか

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「砂漠の狐」と呼ばれたドイツ軍のロンメルが、第2次世界大戦「北アフリカの戦い」で敗れた理由とロジスティクスの関係を探る。

今日へのインプリケーション

 では、第2次世界大戦の北アフリカの戦いでのロジスティクスから、いかなるインプリケーション(含んでいる意味)が得られるであろうか。

 第1に、ロジスティクス全般についてであるが、ドイツ軍のロジスティクスは、総じて作戦主導の思考に固執しており、ロジスティクスあるいは補給を軽視していたことは事実である。また、それゆえドイツ軍が、システムとしてのロジスティクスの構築に失敗した点も挙げられよう。補給は「流れ(フロー)」である。だがドイツ軍は、港湾および港湾施設に代表されるように補給の流れ――連結――の確保に失敗したと言わざるを得ない。
 第2に、北アフリカの戦いに固有の要因については前述とも重複するが、総じてドイツ軍人はロジスティクスに対する知識が欠如していたように思われる。ロジスティクスの重要性への認識不足とも言える。これはロンメルの思考に象徴的に現れており、実際、北アフリカの戦いの敗北には、彼の個人的な資質が果たした役割が大きかったように思われる。

 第3に、ロジスティクスあるいは補給の「流れ」を維持するためには、制海権や制空権の確保が不可欠である。すなわち、地中海での制海権および制空権、さらには、北アフリカ沿岸の港湾から最前線までの制空権をドイツ軍が確保できなかった事実が、北アフリカの戦いでの敗北につながった一因だったのである。

 第4は、インテリジェンス(情報の収集と分析・評価)の重要性である。精密なロジスティクス計画を作成しそれを計画通りに実施するためには、正確なインテリジェンスあるいは情報が不可欠となる。インテリジェンスとロジスティクスは相互補完関係にある。だからこそ、主要諸国で参謀本部制度が確立される初期の時期には、インテリジェンス部署とロジスティクス部署は、オペレーション(作戦)部署よりも重視されていたのである。

 第5に、今日のように技術が著しく発展した状況においても、「距離」という要因の重要性は変わらない。北アフリカの戦いで明確に示された事実は、味方の侵攻が進めば進むほどロジスティクスが困難となった結果、戦いがあたかもシーソーゲームのような様相を呈したことである。

おわりに

 ロンメルが率いる機甲部隊が戦いを継続するためには、膨大な量の補給物資が必要であり、燃料がなければ戦車は前進できず、弾薬が不足すれば戦えないことなど自明であった。加えて、この地域では水の確保は最低限必要なことであった。

 その意味において、「砂漠の狐」ロンメルの責任は極めて大きいのである。

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