「LCC = 安い&狭い」はもう古い? ジップエア「フルフラットシート」に見る、既存ビジネスモデルの崩壊

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価格優先から変化しつつあるLCC。JAL傘下のジップエアトーキョーにはビジネスクラス並みのクラスがある。なぜこのようなものが求められているのか。

LCCには何が求められているのか

ジップエアトーキョーの「ZIP Full-Flat」(画像:ジップエアトーキョー)
ジップエアトーキョーの「ZIP Full-Flat」(画像:ジップエアトーキョー)

 格安航空会社(LCC)はかつて、料金は安いがサービスは極限までシンプル、座席は窮屈なエコノミークラスだけだった。しかし、2020年に初就航したJAL傘下のジップエアトーキョーには、手頃価格ながらビジネスクラス並みの「ZIP Full-Flat(ジップフルフラット)」が登場している。なぜ近年、LCCにこのようなサービスが求められているのか。

 2022年時点で、日本のLCC運航会社は

・ピーチ・アビエーション(大阪府泉南市)
・ジップエアトーキョー(千葉県成田市)
・ジェットスター・ジャパン(同)
・スプリング・ジャパン(同)

の4社だ。ジップエアトーキョー以外の3社は、国内線や短距離国際路線がメインで、エコノミークラスのみ。サービス追加の有無による料金体系の差はあるものの、座席空間の差によるクラス分けは存在しなかった。

 なぜなら、多くのLCCがA320などの

「小型機を満席に近い形で次々と飛ばす」

ビジネスモデルだったからだ。見方を変えれば、短期路線では燃費の良い小さな機材を利用するので、座席占有率の高いビジネスクラスを作れなかった。狭いシートピッチでもフライト時間の短さゆえ、利用者にとってはそれほど大きなマイナスにもならなかった。アピールされていたのは、いずれも“お得な料金”だった。

 しかし、ジップエアトーキョーはシンガポールやアメリカなどの「中~長距離路線」に参入した。そのため、これまでのような狭い座席では満足度の低下が予想された。幸いにも、長距離を飛べる中型機材787-8号の利用によって機内に余裕が生まれた。結果、LCCには珍しい完全フルフラットシート完備につながったと考えられる。

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