山形新幹線「米沢トンネル」計画 1500億円かけてわずか「10分強」のスピードアップは高いか安いか、それとも未来に向けた必須投資なのか

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山形県とJR東日本が「山形新幹線米沢トンネル(仮称)整備計画の推進に関する覚書」が交わした。事業費はなんと1500億円。採算は取れるのか。

「貨物利用」という優位性

山形県が設置した総合支援拠点「スタートアップステーション・ジョージ山形」の入る建物(画像:(C)Google)
山形県が設置した総合支援拠点「スタートアップステーション・ジョージ山形」の入る建物(画像:(C)Google)

 新たな災禍を克服すべく山形新幹線で打ち出されたのが、貨物利用だった。山形新幹線を使って県内の特産品を東京に運ぼうというものだ。

 まず話題になったのは、サクランボだった。2020年6月、つばさに高級サクランボの「佐藤錦」を積み込み、日本橋のデパートまで運送。到着後すぐに販売された。

 サクランボはこれまでトラックで輸送しており、都内までひと晩かかっていたが、大幅な時間短縮となった。サクランボは収穫後2日程度で状態が悪くなるため、うってつけだ。ほかにも、商品価値の高いラ・フランスなどを生産する山形県にとって、高速輸送は極めてパフォーマンスが高い。また、米沢市などの県内にある精密機械工場でも、新幹線による部品輸送が試みられている。納期も早まり、緊急時の対応も可能だ。

 このように、莫大(ばくだい)な資金を投入して新トンネル建設が実施される背景には、乗客の利便性だけでなく、貨物輸送の拡大が念頭に置かれていることがうかがえる。また、コロナ禍でテレワークが普及し、地方移住が増加していることも建設促進を後押ししている。

 山形県は山形新幹線の存在を強みとして、県内での創業支援事業を強化している。実際、都心を離れて地方に労働拠点を置く際の候補として、山形県の存在感は増している。2021年11月に県が設置した総合支援拠点「スタートアップステーション・ジョージ山形」では、登録者の3分の1が県外者で、首都圏在住者も目立つ。

 山形県では新トンネルの覚書と同時に、鉄道沿線の活性化と利用者増を図るための協定もJR東日本と結んでいる。この協定が意図するのは、山形新幹線を軸に在来線を使って県内各地を首都圏と結ぶネットワークの強化だ。これを実現させるためには、山形新幹線に

「定時運行の信頼性」

を持たせる施策が欠かせない。

 山形県は新幹線に頼るのではなく、新幹線を「利用」して、地域の活性化をもくろんでいる。15年後に予定されているトンネル完成まで、街にはどのような変化が訪れるのか。期待したいところだ。

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