激変する「京急大師線」沿線 マンション乱立で新住民流入、路線利用者2割増の真実とは

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現在、京急大師線沿線の風景が変わっている。新たなマンションが多くつくられ、新住民も増えている。いったいなぜなのか。

「殿町キングスカイフロント」の登場

殿町キングスカイフロントの位置(画像:(C)Google)
殿町キングスカイフロントの位置(画像:(C)Google)

 そんな路線の風景が変化を始めたのは21世紀に入ってからだ。市内幸区に2003(平成15)年、「新川崎・創造のもり」がオープン。川崎市はベンチャー企業や研究施設を誘致し、川崎区殿町地区(最寄りは小島新田駅)が国際戦略総合特区に指定されたのを契機に、再開発を進めた。

 その中心となったのが、現在は約70の企業や大学がライフサイエンス分野の研究施設をおく「殿町キングスカイフロント」だ。2011年のオープン当初は広大な土地にわずかな研究施設しかなかったが、国際戦略総合特区の指定を受けたことで状況は一変。多くの関係機関の誘致に成功した。

 誘致の成功理由は、羽田空港からの近さだった。羽田空港と同地区は多摩川を挟んで対岸、1km程度しか離れていない。問題は川を横断するルートがなく、川崎駅方面に迂回しなくてはならないことだった。

 しかし、2022年3月に両岸をつなぐ「多摩川スカイブリッジ」が開通した。4月からは大師橋駅前・浮島バスターミナルから、殿町キングスカイフロントを経由して天空橋駅とをつなぐ路線バスも運行を開始した。これによって「場末」と思われていた京急大師線沿線は、最先端のエリアと見られるようになった。

「羽田空港に徒歩圏内」という価値

小島新田駅周辺の様子(画像:(C)Google)
小島新田駅周辺の様子(画像:(C)Google)

 京急大師線沿線は元々、川崎市中心部のマンション価格高騰にともない、1990年代後半からマンションが建設されるようになっていた。ただ、それはあくまでも中心部の余波を受けたもので、小島新田駅周辺の地元民も

「あんなところのマンションを買うのか」

と話しているのを、筆者(大居候、フリーライター)は聞いたことがある。

 ところが現在は違う。小島新田駅周辺は「羽田空港に徒歩圏内」を看板に、人気エリアへと変貌している。大型スーパーは徒歩15分ほど離れたオーケー川崎大師店くらいだが、そこまで行けば、島忠や西松屋などの生活系店舗はそろっている。また最近分譲中のマンションの価格は、2LDK・専有面積61.20平方メートルで3930万円となっている。川崎駅周辺で同程度の物件を買おうとすれば、価格は6000~7000万円台であることを考えると破格である。

 小島新田駅以外でも、港町駅前では日本コロムビア川崎工場跡地が28~29階建て3棟からなるタワーマンションに変貌した。同駅は駅舎を改造し、マンション側に改札口を設けた。鈴木町駅近くでも、やはり工場跡地に大規模マンションが建設されている。

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