北陸新幹線「延伸」に大逆風 千年の都「京都」を脅かす地下水脈への打撃、市長も思わず釘刺し懸念の現実とは
2023年着工見込みから未定に

小浜・京都ルートは、敦賀駅から
・新駅(小浜線東小浜駅〈福井県小浜市〉付近に建設予定)
・京都駅
・新駅(片町線松井山手駅〈京都府京田辺市〉付近に建設予定)
を経由して、新大阪駅まで接続する予定だ。2021年時点で、2023年着工の見込みだったが、現時点で具体的な日時は未定となっている。
その理由は、延伸ルートで予定されているトンネル建設だ。延伸にあたって、京都府内で総延長約60kmの地下トンネル建設を予定している。敦賀~新大阪間の総延長は約140kmであるため、トンネル区間は極めて長い。このトンネルは地下40m以上の大深度に建設される。
京都駅、新大阪駅周辺でもトンネルを掘削することが予定されており、整備新幹線の工事としては過去最大量の残土が見込まれる。既に、国土交通省も地下水、埋蔵文化財、軟弱地盤、在来線などの交差を施工上の懸念事項として挙げている(『北國新聞』2021年2月18日付朝刊)。
地元保守系市長ですら工事反対

それ以上に不安視されているのが、トンネル建設による沿線の環境破壊だ。
2022年10月には、京都市の市民団体が延伸計画の白紙撤回を求める署名約2万7000人分を国に提出した。この署名数の多寡にはさまざまな見方があるが、沿線では延伸工事に対する拒否感が極めて強い。
最も反対の声が強いのは、府中部に位置する南丹市だ。同市美山町の田歌(たうた)地区では、2019年に工事を担う鉄道建設・運輸施設整備支援機構が初めての説明会を開催されたが、2020年8月には、機構による環境影響評価の受け入れ見合わせを全戸一致で決めている。
美山町には京都丹波高原国定公園が広がっている。そのため、反対理由は
・大規模工事を行う妥当性
・有害物質を含む恐れがある残土の処分方法の不明確性
が挙げられている。
南丹市は過疎化が進んでいたものの、自然の多い環境を求める移住者によって集落が再生している。工事が進めば、環境が破壊され、移住者を呼び込む魅力も失われてしまう。その上、開通後に利便性が増すといった恩恵もない。
反対の声は市内に広がり、2021年9月には、南丹市の西村良平市長が市議会で
「来てほしくないというのが率直な思い」
とまで発言している。
現在二期目の西村市長は保守系市議やJAなどが支持層で、企業誘致などの政策も進めている。そうした人物が「来てほしくない」と発言するのだから、新幹線の延伸が南丹市にとって
「弊害しかもたらさない」
という意識が共有されていることが分かる(『朝日新聞』2022年10月5日付朝刊)。