トラックドライバーの事故が続発! ピンチの大手物流会社が「ヒヤリハット」を94%減できたワケ

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人は機械とは違う。どんなにマジメに職務に取り組んでいても、心身の不調によりミスを犯すことがある。だが、プロドライバーの場合、そのミスは人の命を奪ってしまうことがある。

漫然運転を行う心身の状態を検知

ウェアラブル心拍センサー(Polar Verity Sense)。手首ではなく前腕部分に取り付けるのは、より安定した心拍測定のため(画像:坂田良平)
ウェアラブル心拍センサー(Polar Verity Sense)。手首ではなく前腕部分に取り付けるのは、より安定した心拍測定のため(画像:坂田良平)

 現在では、一部の乗用車、商用車にエマージェンシー・アシスト・ストップという仕組みが導入され始めている。

 これは、ステアリングが保持されていない状態を検知すると、警報を発したうえで、走行中の車線で自動的に車両を停止させる仕組みである。だがこれは、ドライバーの体調急変が発生した後で被害を最小限に抑える仕組みであって、こういった不測の事態を事前に察知する仕組みではない。

「漫然運転を引き起こしかねないようなドライバーの心身の状態を検知することが、乗務前にできれば、交通事故を未然に防ぐことができるのではないか?」と考え、仕組み化したのが、日立物流が日立製作所や理化学研究所などと産官学連携で開発した「SSCV-Safety」である。

 冒頭のエピソードをきっかけに、日立物流は、自社、グループ会社らのドライバーの協力を得て、運転中の体調と事故リスクの相関性を研究した。

 2019年から2020年にかけて、4000人のデータを収集し、分析したことで、ヒヤリハット事象を起こしてしまうようなドライバーの心身の不調を、乗務前に検知する仕組みを作り上げた。

・乗務前には、体温、血中酸素濃度、血圧、自律神経を測定することで、ドライバーの体調や疲労度を把握して事故リスクを事前に予測
・運転中は、自動でヒヤリハット事象を検知・通知するクラウド型ドラレコと、ウェアラブル脈拍センサーによって、ドライバーの疲労状態を検知

 日立物流グループでは、「SSCV-Safety」の実装によって、ヒヤリハット事象を94%減少させることができたという。

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