「EV = 日本で普及しない」といまだに言い続ける人たちへ あなたたちは基幹産業を弱体化させるつもりなのか? データで徹底証明する

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世界がEVを推し進めるなか、日本国内のメディアなどは「EVは製造で大量の二酸化炭素を排出する」といまだに主張している。これは本当なのだろうか。

本気でEVを普及させる世界の取り組み

テスラが発表した4680電池によるコスト削減の内訳。テスラの発表資料より(画像:テスラ)
テスラが発表した4680電池によるコスト削減の内訳。テスラの発表資料より(画像:テスラ)

 世界が足並みをそろえてEVへの移行を急ぐ背景には、このように相応の科学的根拠が存在するが、具体的にどのような取り組みをしているのだろうか。本章では参考として、海外の取り組みをいくつか紹介する。

 まずはEVを作るメーカーの取り組みとして、導入のハードルとして語られることの多い「コストの削減」について見てみよう。EVの価格が高い原因は主に電池のコストだが、これからの数年間で特に期待されている新たな電池として、テスラが中心の「4680電池」と、BYDやCATLなど中国勢が中心の「LFP電池」がある。

 前者の4680(直径46mm、高さ80mm)電池は円筒形電池の一種で、これまで主流だった2170(直径21mm、高さ70mm)電池を大きくしたものだ。電池の個数を減らして車体と一体化、さらに乾式電極と呼ばれる製造の簡素化により大きくコストを削減できるとしている。後者のリン酸鉄リチウム(LFP)電池は、従来のリチウムイオン電池のようなコバルトなどの希少金属を使用しない電池だ。これまではエネルギー密度が低い(航続距離が短い)という課題があったが、搭載方法の工夫や新たな添加剤の採用などにより、十分なエネルギー密度が確保できるようになった。

 次にインフラ整備として、筆者が最も注目している米国から、2022年8月に成立した「インフレ抑制法」に伴う取り組みを紹介したい。法案の名前からは想像しにくいが、実際には気候変動対策やエネルギー安全保障対策として、再エネなどのクリーンエネルギーとEVの普及などを推し進めるもので、総額は3690億ドル(約53兆円)にのぼる。EV関連では全米50州の7.5万マイル(約12万km)にわたる高速道路網に急速充電器を整備し、大半の人にとってEVが内燃機関車より便利になるよう、全国に充電インフラを整備する。さらに現在はアジアなどの特定の国に頼っている電池やその原材料を、北米や同盟国などから調達することを促進する。

 欧州では米国よりも急速充電インフラの整備が進んでおり、2021年の時点で33万か所の公共充電設備があり、このうち3%にあたる約1万か所が100kW以上の超急速充電器が占めている。これは6年前と比べると7倍近くの成長で、2030年までに約9倍にあたる296万か所まで増えると見られている。さらに充電インフラの整備により新たな雇用を創出し、2021年の3.5倍を超える12万人以上まで増えるとされている。今後減少が予想されている内燃機関や化石燃料関連の雇用に代わり、このようなEV関連や再エネなどのクリーンエネルギー関連に移行することが重要といえるだろう。

 ただし、EVは自宅や目的地での普通充電が基本であり、急速充電はあくまで

「一気に車両の航続距離を超える移動をするとき」

など、緊急時のための設備であることに留意したい。普通充電には数千円程度の200Vコンセントを用意すればよく、一般的な戸建てなら多くの場合は工事費を含めても数万円程度で設置できる。自宅で燃料を補給できるEVは、ガソリンスタンドやサービスステーションでしか燃料を補給できない内燃機関車とは、使い方が根本的に異なるのだ。

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