「EV = 日本で普及しない」といまだに言い続ける人たちへ あなたたちは基幹産業を弱体化させるつもりなのか? データで徹底証明する
本当にEVは環境に良いのか

それでは、本当にEVは内燃機関車よりも環境に良いのだろうか。これは多くの
「自動車メーカーや化石燃料業界が関わっていない」
学術論文により肯定されている。
例えば英ケンブリッジ大学などが2020年に公開した論文「Net emission reductions from electric cars and heat pumps in 59 world regions over time(世界59地域における電気自動車とヒートポンプによる純排出量の経年変化)」によると、世界の59の国と地域のうち、日本を含む95%の国と地域ではEVのほうが排出が少ないとされている。当然ながら、これは現時点での日本の発電による排出量で計算した結果だ。
これに対して、特定の内燃機関車の車種を挙げて
「1Lあたり〇〇km走れるので(あるいは1kmあたりの排出量は〇〇グラムなので)、こちらのほうが環境に良い」
のような主張もあるが、この主張は「木を見て森を見ず」といえる。確かに特定の車種や条件を抜き出して比較すれば逆転することもあるが、全体で見ればEVのほうが低排出だからだ。
これを確認するには、米マサチューセッツ工科大が開発し、多くの学術論文で引用されている計算ツールである「CARBONCOUNTER」を用いるとわかりやすい。このツールでは、発電による排出量や走行距離などの前提条件を入力することで、誰でも簡単にLCAによる排出量を計算することができる。
例えば現在の日本の発電による二酸化炭素の排出量に近い1kWhあたり550gを当てはめた場合、多くの車種でEVのほうが内燃機関車やHVよりも排出量が少ないことがわかる。加えて、前述の通り2030年には発電による排出量をほぼ半減させる計画であり、もし計画通りに1kWhあたり280g前後まで減少した場合、当然ながらこの差はさらに広がることになる。さらに、
「電気はさまざまなエネルギーから作ることができる」
という点も重要であり、例えば、戸建てであれば屋根に太陽光パネルを設置することで、さらに排出量を削減できる。参考までに、筆者の場合は事務所に設置している太陽光と蓄電池から車を充電しており、条件の良い月は電気代の請求が数百円以内(数kWh程度の消費量)に収まることも珍しくない。
ただし当然ながら政府が目標とする2050年のカーボン・ニュートラルにはまだ不十分であり、製造や発電による排出量を限りなくゼロに近づけることが必要になる。将来的にはEV以外の有望な選択肢が登場する可能性もあり、既得権益を持つ企業や団体に翻弄(ほんろう)されず、さまざまな科学的エビデンスを基に見極める必要があるだろう。