作業はいつも命がけ!「荷さばき」トラックの過酷な労働環境と監視の目、荷主は配送員に路駐リスクを押し付けるな

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都心の繁華街などで日常的に見かけるトラックの荷さばき、荷降ろし場のない商店に納品する配送員の姿、この光景は、駐車違反のリスクを配送員に背負わせる理不尽な行為だ。

「当たり前の光景」に配達員の犠牲あり

駐車スペース(画像:写真AC)
駐車スペース(画像:写真AC)

 ルート配送のベテランドライバーが語る。

「それでも昔に比べたらマシになったとは思いますよ。苦情の積み重ねもあったのだと思いますが、専用スペースを別の場所に作ったり、元から場所のない都心ですから大変だと思います」

 東京都では2000年代初頭から「貨物車用」や「荷さばき用」といったパーキングメーターが増えた。また2019年にはコンビニ大手3社が都心部の店舗で荷さばきスペースを借り上げ、共用する計画を発表した。自治体のなかにも駅周辺の荷さばき問題に取り組んでいる区や市がある。例えば吉祥寺や町田の駅周辺などは古くから過密状態で道も狭いため、荷さばき駐車施設の整備を地域や企業と連携して取り組んでいる。

「それでも非協力的な荷主は多いですし、近隣の駐車場を使えってありえないくらい遠い場所だったりします。人通りの多い歩道をカゴ台車を延々押したり道路に出て押したり、現実的じゃないですよ。古い商店街の道路なんて昔のリヤカーやオート三輪時代そのまんまですから、商店街入り口の大通りに駐車して台車を延々と押したりします」

 本当に大変な苦労だと思う。筆者はこれまた別のチェーン店で急な坂道を何度も下る配送員を見て申し訳なくすら思った。自転車すら置けないチェーン店、都心の駅前や繁華街では当たり前の光景だが、その当たり前は配達員の犠牲で当たり前になっている。リスクを彼らに押し付けている。

物流は「国家の血流」

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 今回は東京、それも都心や都下の繁華街という特殊な事例によるものだが、こうした荷さばきの場所がないという実態は全国のターミナル駅周辺や改めて開発の難しい歴史的な古い街でも問題となっている。京都などは最たるもので長年取り組んではいるのだが、やはり東京の都心同様、新たな用地も確保できず、物理的に難しい課題のままとなっている。

 新宿や渋谷、池袋のターミナル駅周辺など、確かに都心には「どうにもならない」という立地もある。だからといって、配送員に駐禁や危険のリスクをいつまでも押し付けたままでいいのだろうか。

 もちろん国土交通省は都市開発レベルで指導を続けてきたし、東京都にも東京都駐車場条例や東京都集合住宅駐車施設付置要綱などはあるのだが効果は薄いままだ。新たな商業ビルやタワマン、店舗などはより厳しい法律や条例を作るべきだし、ある程度の強い罰則も必要だろう。はっきり言って、一部のチェーン店やディーラー、デベロッパーの公道占拠は

「故意にフリーライドを狙っている」

としか思えないケースもある。

 フリーライドを野放しにして誰かを犠牲にする、そのリスクは常に現場に押し付けられてきた。荷さばき場所の問題は長年解決しない難しい課題だが、私たちのために配送員はリスクを負い続けている。

 行政や業界だけでなく、物流という「国家の血流」のため、国全体で今一度取り組むべき課題だ。

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