時速110km! 貨物輸送の速達化に貢献、「大出力機関車」の揺るぎない存在価値とは
貨物輸送の速達化に貢献
貨物列車の魅力は、機関車が力強く貨車を引っ張っていくところにある。5月21日に報道公開されたEF66形27号機は、EF66形の0番台として最後まで運用されていた車両で、「ニーナ」と呼ばれ人気が高い。
貨物列車には、
・高速化
・牽(けん)引力強化
が求められてきた。
国鉄時代から残り続けているEF64形やEF65形は100km/hが限界であるのに対し、最近の機関車は110km/hまで速度を出せる。それゆえ、貨物輸送の速達化に貢献してきた。
では、最近の貨物用大出力機関車にはどんなものがあるのだろうか。
変電所が対応できなくなったことも
現在、JR貨物の東海道本線・山陽本線で主流となっているのは、EF210形である。国鉄時代のEF66形、JR貨物になってからのEF66形100番台の流れを受け、高出力機関車EF200形が登場した。この機関車は、6000kWの大出力で、1600tの貨物列車を牽引しようとした。
だがあまりにも出力が大きすぎて、地上の変電所などが対応できないということになった。そのため、この機関車は出力を制限して運用されることになった。また登場した1990年代前半は、景気が後退してきたため、輸送力がそれほど求められる状況ではなくなっていた。
しかし、高速性能が高い機関車は求められていた。従来のEF65形は100km/hであったことから、旅客列車の間に走行するには速度を上げる必要があった。東海道・山陽本線では普通列車でも最高速度120km/h、新快速は130km/hである状況のため、貨物列車の速達性は変わらず求められることになった。
そのためにEF210形が登場した。EF66形100番台の出力3900kWには及ばなかったものの、3390kWの出力を確保し、古いEF65形を置き換えていった。コンテナ貨物は1300tを運ぶことができ、十分すぎる性能である。
直流平坦線区は出力よりも速達性
1996(平成8)年に0番台が登場、100番台は2011年までに製造された。「ECO-POWER桃太郎」の愛称で親しまれている。2012年からは「瀬野八」と呼ばれる山陽本線の急勾配区間の補機としても使用可能な300番台が登場、現在でも製造され続けている。
瀬野八ではこれまで、EF67形という専用の機関車が使用されていたものの、この300番台は汎用(はんよう)性を持たせてほかのEF210と同様に各線でも使用できる。
平坦線区では、大出力こそ必要であっても、強大すぎる出力は必要なく、むしろ速達性こそが貨物用機関車に求められている。では、ほんとうに大出力の機関車はどこで求められているのか。勾配線区である。