作業はいつも命がけ!「荷さばき」トラックの過酷な労働環境と監視の目、荷主は配送員に路駐リスクを押し付けるな
荷さばきの場所のないチェーン店

その配送員は、都内の急な坂道でカゴ台車を押し続けていた。トラックは路上に駐車している。片側一車線だが自転車ナビマーク分、少し広い。車はひっきりなしに横をすり抜けて行く。双方ともに、非常に危ない。
配送員はあるチェーン店に入っていった。カゴ台車に載せた、大量の商品とともに。そのチェーン店に駐車場はなかった。しばらく後、店員に車を止めたいと聞いてみると「駐車場はありません」と言われた。あえて「それでは、荷さばき(荷物の処理・整理)はどこでするのですか」と聞くと店員の顔は明らかに険しくなった。彼は「店の前です」と答えて、レジを女性ひとりに任せてバックヤードに消えた。
荷さばきの場所もないのに営業している。これはおかしくないか。
配送員は路上駐車でカゴ台車を下ろし、店まで押して商品を納品する。路駐ということは多くの場合、
「厳密には駐車違反」
となる。また冒頭のケースのほかにも、筆者(日野百草、ノンフィクション作家)は駐車場のない都内のコンビニで同様のケースを目撃している。
この都心の繁華街やターミナル駅周辺なら日常的に見かけるトラックの路駐による荷さばき、荷降ろし場のない商店に納品する配送員の姿、これらはすべて、荷主が路上をフリーライド(ただ乗り)して、駐車違反のリスクを配送員に背負わせる理不尽な行為である。
「昔からですよ。都心のタワマン(タワーマンション)なんかも荷さばき場がないところがあります。駐車監視員の格好の餌食ですよ」
ベテラン配送員から話を伺うと、昔からの問題と半ば諦めぎみだった。
「彼らはちゃんと目星をつけて狙ってる。ノルマもありますからね。でも彼らが悪いわけではありません。配送員も悪くない。こじゃれた外観でカッコつけるだけで、満足な荷さばき場もなしにタワマンを建てる業者と、それを許す国や行政が悪いのです」