トヨタもマツダもロシア撤退 プーチンの部分動員令がもたらした「思わぬ副作用」とは
部分動員令を発表したプーチン大統領
2022年9月21日、ロシアのプーチン大統領が部分動員令を発表した。この発表によると、数か月かけて予備役30万人を段階的に招集する。
今回の部分動員令では、軍務・戦闘経験や特殊な軍事技能を持つ予備役を招集する見通しだ、戦車の操縦手や工兵、狙撃手などがその対象となるということだ。
この部分動員令の発表後、日本企業のなかにはロシアからの撤退を決定する企業が相次いだ。トヨタはサンクトペテルブルクにある工場を閉鎖し、ロシアでの生産から撤退すると表明した。マツダはロシアのソラーズ社との合弁でウラジオストクに作った工場での組み立てを終了する見込みだ。
両社の設備はそのまま残して撤退するだろう。今後はロシアでの生産を中止し、修理などのアフターサービスのみを行うとしている。
経済制裁とロシアからの撤退
2022年2月のウクライナ戦争開戦後、欧米諸国や日本がロシアに経済制裁をかけるなか、多くの企業がロシアから撤退してきた。多くの企業は、経済制裁によってロシアでの経済活動に支障が出ると考えた。
経済制裁によって、
・ロシア以外から原材料の調達が困難になったこと
・各国の銀行間の送金を処理するスイフトからロシアが排除されたためにドル建てでの送金、決済が困難になったこと
や、欧米や日本ではロシアに対する厳しい目が向けられているため、ロシアで事業を続ける会社に対する視線が厳しくもなっている。
ウクライナ戦争開戦後でも、事業を継続していた企業はトヨタやマツダのように生産設備を有している企業が多い。これらの企業にとっては、せっかく投資した生産設備を捨てる訳にはいかず、企業としての総合的な判断から事業を継続しているという事情もあるだろう。
これらの企業はウクライナ戦争の行方を、固唾(かたず)をのんで見守っていた。そして、ウクライナ戦争が終わり、生産を再開できるようになれば、企業活動を再開しようと考えていた。店舗型の企業と異なり、生産設備を持つ企業のフットワークが重いのはやむを得ないだろう。
しかし、それを一変させたのが、今回の占領地編入と部分動員令だった。続いて、これらがロシアをどう変えるのかを見ていきたい。