トヨタもマツダもロシア撤退 プーチンの部分動員令がもたらした「思わぬ副作用」とは
占領地編入で新たなフェーズに入るロシア

部分動員令の発表と前後して、ウクライナのロシア占領地と親ロシア派武装勢力の支配する地域では、住民投票が実施された。その結果、これらの地域はロシアに併合された。
住民投票に対して、欧米や日本、そしてウクライナはこの結果を認めないとしている。しかし、ロシアの視点に立てば、併合された以上、これらの地域はロシアの領土ということになる。
プーチン大統領などのロシアの高官たちは
「わが国の領土保全が脅かされた場合、利用可能なすべての兵器を使用する」
としていた。
このすべての兵器には戦術核も含まれるとされている。つまり、ロシアが併合した地域をウクライナが奪還しようとしたならば、領土保全が脅かされたとして、戦術核を使用すると言っているのだ。
ウクライナ戦争発生以降、ロシアは核の脅しを使ってきたが、住民投票とロシア領への編入を受け、ロシアの立場から見た核兵器の使用条件が整いつつある。ロシアは状況をエスカレートさせている。状況に打開の見込みはない。
ウクライナ戦争発生後、状況は悪くなる一方だ。ロシアの強硬姿勢からは、ロシアはウクライナで一歩も引く姿勢を見せていないのがわかる。
部分動員令の経済に与える影響

もうひとつの要素が部分動員令だ。
ウクライナ戦争でロシア軍は敗退を続けており、兵士不足に悩まされている。ウクライナの攻勢を受け、ロシア軍は占領地を放棄していると見られるが、ロシア軍が反撃に出るために戦力の立て直しを図るつもりだろう。しかし、徴兵された兵士の士気は低く、戦力の立て直しになるかはわからない。
部分動員令でロシア政府は30万人を動員するとしている。工場の熟練工など、多くの企業にとっては働き手を失う結果となりかねない。経済制裁の中でも生産を続けてきた企業にとってはさらなるダメージとなろう。部分動員令の発表は、これまで撤退しないでロシアに止まっていた企業にとっては、
「とどめの一撃」
以外の何物でもなかったのだ。
部分動員令の発表は思わぬ副作用をもたらした。多くの人々がロシアの国境を越えて、他国へと逃れようとしている。ロシア経済にとっては、部分動員令での徴兵以上の人出を失う結果となっている。
これを受けて、ロシア経済も大きく揺らいでいる。ウクライナ戦争発生後、西側の経済制裁を受けているロシア経済はエネルギー価格高騰の影響もあり、辛うじて経済を安定させてきた。部分動員令の発表で、投資家はロシア経済への悪影響を懸念し、ロシアの株式市場は急落している。
部分動員令は、ロシアの戦力立て直し策の一環だが、戦力を立て直すどころか、さらに追い詰めるのかもしれない。