人口減少時代の交通再編 香川県「ことでん」が切り開いた、ローカル線生き残り戦術をご存じか

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ローカル線に打開策が見いだせないなか、香川県高松市を地盤にする高松琴平電気鉄道が持続可能な公共交通網の再構築を進めている。いったいどのような取り組みなのか。

列車を利用できない地方在住者

高松城を背景に走る高松琴平電気鉄道の電車(画像:小川裕夫)
高松城を背景に走る高松琴平電気鉄道の電車(画像:小川裕夫)

 2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスは、鉄道事業者に大きなダメージを与えた。テレワークの推奨やイベント自粛によって、外出の機会は大幅に減少。これに伴い、鉄道需要も激減している。

 これまで地方の路線は、都市部の黒字路線によって赤字を穴埋めされていた。しかし、都市部の路線も収支が厳しくなり、赤字額の大きい路線を廃止するしかない状態にまで追い込まれている。

 黒字路線が閑散路線の赤字を補填する構造はコロナ禍で一変したが、最近になって赤字路線の存廃議論がやかましいのはコロナだけが理由ではない。言うまでもなく、地方都市は急速に人口が減少し、鉄道需要も比例して急減しているからだ。今後、利用者が増加する見込みがないのは言うまでもないが、老朽化した線路・駅舎などを更新する手だてがない。

 そもそも、地方都市は自動車移動がライフスタイルに組み込まれているので、18歳以上の大人が鉄道を利用する機会は少ない。民間の商業施設も自動車社会を前提に郊外に大型店を出店しているので、ますます鉄道を利用する必要がない。鉄道を維持する必要性も低い鉄道事業者は、利用が少ないことを理由に運転本数を大幅に削減。1時間に1本あるならマシな方で、昼間帯に2~3時間も列車が発着しない駅すらある。これでは

「列車を利用したくてもできない」

というのが地方在住者の本音だろう。

 こうした鉄道事業者と利用者の乖離(かいり)により、地方の鉄道路線はますます負のスパイラルに陥る。しかし、鉄道がなくなれば高校生の通学や高齢者の通院などに支障をきたしてしまう。だから、地方自治体や地域住民は「自分は利用しない」としても鉄道の存続を要望する。

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