コロナ禍で救急車「出動率97%」の現実 「電話つながらない」の声多数、今こそ不適切な救急要請を止めるべきだ

キーワード :
,
コロナ禍の影響で、119番につながりづらい事象が多発している。そんななか、私たちが考えるべきことは何か。

「救急搬送困難事案」という悪夢

救急車(画像:写真AC)
救急車(画像:写真AC)

 これが「救急搬送困難事案」と呼ばれる事態で、総務省消防庁によれば、

・医療機関への受け入れ照会回数4回以上
・現場滞在時間30分以上

が救急搬送困難事案にあたるとしている。

 それどころか、119番にすらつながりづらいケースもある。数十分どころか1時間つながらない事態も報告されている。これが恐ろしいのは、心筋梗塞や大動脈解離といった致死率の高い心臓疾患や、脳梗塞やくも膜下出血といった同じく致死率の高い脳血管疾患の傷病者も巻き込まれてしまうことにある。いずれも一分一秒を争う急性疾患であり、短時間でも放置すれば高い確率で「死」が待ち構えている。

 筆者(日野百草、ノンフィクション作家)も43歳のときに心筋梗塞を経験しているが、

「あと1時間で危うくあの世だった」

という医師の言葉は真実だ。

 基本的に10分以上の胸部痛やろれつがまわらない、半身がしびれて動かない、大量の吐血などは即救急車で構わないと、総務省消防庁も「突然のこんな症状の時にはすぐ119番」としてリーフレットで呼びかけている。

 もちろん重大な交通事故も含め、これら緊急性の高い非コロナ疑い事案もまた、このコロナ禍の第7波、1日あたりの新規感染者25万4534人という非常事態に巻き込まれている。

 しかし、このような事態にも関わらず、残念ながら救急車を適正に利用できない人たちもいる。例えば神戸市消防局は「救急車の適正利用にご協力を!!」として以下の過去事例を挙げている。

・かすり傷
・歯が痛い
・診察予定日なので病院に行きたい
・ヘルパーさんが来られないので、代わりに救急車を呼んだ
・急に不安になった

このコロナ禍でも同様の事案が多発している。同消防局は、

「救急車の安易な利用が増えると、「救える命」を救えなくなってしまいます。生命の危険があり、緊急に救急車を必要としている人の元に1秒でも早く救急車が到着できるよう、緊急性のない場合やタクシー代わりに救急車を呼ぶことはやめてください」

と呼びかけている。

全てのコメントを見る