鉄道運賃への導入で話題 価格「変動制」がもたらす知られざる社会の歪み

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需要の高さに応じて料金を変動させるダイナミックプライシングが現在、話題になっている。事業者側は収益を最大化できるが、反面、利用者にはデメリットもある。

求められる就業・就学システムの変化

鉄道(画像:写真AC)
鉄道(画像:写真AC)

 ただ、通学生など、鉄道の料金が高い場合、他に移動手段の選択肢のない人にとっては負担増となり、生活が厳しくなってしまうということにも留意しなければならない。また、通勤通学時の料金を上げたとしても、社会全体で就業・就学システムを根本的に変えない限り、ラッシュアワーは根本的には解決されず、企業や個人の負担が増すだけで社会的生産性が低下し、経済にマイナスの影響を与えることになりかねない。

 ダイナミックプライシングによる通勤費対策として、始業時間と退社時間が企業ごとにまちまちになってしまえば、会社間の連絡・連携関係に支障をきたす可能性がある。かつてフレックスタイム制が日本で導入されようとしたときには、結局こうした問題のために普及しなかった。それに中途半端な値上げにとどまれば、

「それくらいの負担で済むならば、従来の勤務体系を維持した方が、大幅な改革を行うよりも楽で、経費もかからない」

ということになり、それを社会は受け入れるだけのことになってしまうだろう。

 その場合、鉄道会社が見込める増益の幅もそれほどのものではなくなってしまう。かといって、一気に高需要の時間帯に大幅な料金値上げをしようとすれば、企業活動等に大きな影響を与えることになり、深刻な社会問題となり、実現は阻まれるだろう。

無関係な人まで高負担の可能性も

タクシー(画像:写真AC)
タクシー(画像:写真AC)

 さて、他の公共交通での状況はどうなのだろうか。タクシーでもロードプライシング導入の動きはある。ただ、ここでも海外の事例として知っておくべきことがある。日本では、タクシーも認可運賃制をとっている。つまり、タクシーも公共交通なのだ。

 これに対し、ウーバーという会社をご存じだろうか。ライドブッキング(ライドシェア)と言われるビジネス形態で、タクシーと同様のサービスを一般のドライバーが提供するシステムだ。日本ではまだ営業を行っていないが、海外ではダイナミックプライシングを導入している。

 ある場所でコンサートが開催され、そこで配車需要が一時的に急増することになった。その結果、料金が一気に4倍程度に高騰した。これを当然のこととするか、問題視するかである。問題視する立場からは、

「当該コンサートには全く関係のない人がその時間帯にタクシーを利用しようとしたら、とんでもなく高い料金を負担しなければならなくなる」

という点を重視する。

 公共交通にとって求められる重要な要素として、わかりやすい料金体系ということもある。あまりにコロコロと変わってしまうような料金体系は、利用者にとってそれが基礎的な生活に関わる場合、大きな不利益となりうることも考慮しなければならない。さすがに鉄道料金がしょっちゅう変更されるという事態はないだろうが、本来の「ダイナミック」プライシングとはそういうものなのだ。

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