利益「たった数十円」でも働くフード配達員 ひ孫請けまで広がる搾取構造を疑え

キーワード :
, ,
コロナ禍で一気に注目が集まったフードデリバリー。しかしそこには新たな搾取の構造があった。

「請ける側も請ける側だ」は間違い

フードデリバリー用の自転車(画像:写真AC)
フードデリバリー用の自転車(画像:写真AC)

 中抜き問題で筆者(日野百草、ノンフィクション作家)はこれまで多くのルポで訴えてきたが、実際に働く現場や労働者に正当な対価が支払われないのは明らかにおかしい。

 この国は古くからのゼネコンや2000年代のブラック派遣労働はもちろん、東日本大震災の復興や除染作業でもひ孫請けどころか8次下請け、9次下請けまで野放しにしてきた。この体質は新しい働き方ともてはやされたネット宅配やフードデリバリーでも健在で、もはや中抜きもまた「日本病」ではないかとすら思わされる。

「でもね、請ける側も請ける側だ、という人はいますが、そこしか行く場所のない人もいるのです。そういう人だから中抜きされても構わないなんて、理不尽だと思います」

 配送員のいう通りで、本来はそういった人でも安心して働ける社会やシステムを目指すべきだが、国の対応は後手後手に回り、それをいいことに一部クライアントが過度の中抜きという一線を越える。

 先にも言及したがじつのところ、フードデリバリーがアマゾンのような発注者であるならともかく、あくまで仲介アプリであるという体をとっている部分もこの問題を複雑にしている。日本はまだ国としてこの新しいサービスに対処しきれていない。

 それでもアマゾンのユニオンが声を上げたことはフードデリバリー業界の問題にも参考になる。フードデリバリーにもユニオンはあるが、今後は連帯して企業や国と、対立ではなく建設的な意見を上げるべきだろう。「声なき声」が

「声ある声」

に変わることで社会は変わる。日本のデリバリーも全体もまた変わる。この中抜きという「日本病」はもはや個人の努力ではどうにもならない段階に来ている。

全てのコメントを見る