人口減少の地方都市 中心駅周辺の建物はもはや「高層マンション」が無難なのか
全国で鉄道駅を核とした拠点作りの構想が行われているが、成功例は数少ない。問題の本質は何だろうか。
回遊人口が増える最良の手段とは

このような都市の代表例が、茨城県土浦市だ。JR土浦駅からペデストリアンデッキでつながる市役所の建物には、スーパーや100円ショップが入居している。
この市役所の建物は、もともと1997(平成9)年にイトーヨーカドーを核テナントとして開業した商業ビル「URALA」だった。その後、2013年にイトーヨーカドーが撤退し、当時移転が議論されていた土浦市役所の移転が決定した。
開庁は2015年9月。その後、駅に隣接した別の建物には図書館が開館するなど、駅周辺には今でも多くの人が集まっている。ただ、にぎやかなのは駅周辺のわずかなエリアのみで、観光地である土浦城(亀城公園)まで歩いてみると、かつてはにぎわっていた商業エリアが閑散としていることがわかる。
このように、鉄道駅を核とした拠点作りの構想は、拠点にのみ人が集まり、それ以外のエリアは一層閑散となる現象を生み出す。少子化と大都市への一極集中が加速するなかで、人口の少ない地域が複数の拠点を持ち、回遊を促すのは困難だ。
これまで、筆者(碓井益男、地方専門ライター)は各地の駅を核とした再開発を調査してきたが、成功事例は
「駅直結の高層マンション」
を建設したものが多い。
風景だけを見れば凡庸極まりないが、駅周辺の回遊人口が増える現実的な手段は、残念ながらこれなのだろう。