日暮里・舎人ライナー「輸送人員倍増」も 都が大規模予算を割けない複雑事情

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日暮里駅と見沼代親水公園駅を結ぶ日暮里・舎人ライナーの輸送人員が倍増している。混雑は激化したものの、東京都交通局は大規模な予算を割いていない。なぜか。

約10年で倍になった輸送人員

日暮里・舎人ライナーは全線高架を走る(画像:小川裕夫)
日暮里・舎人ライナーは全線高架を走る(画像:小川裕夫)

 東京都荒川区の日暮里駅と足立区・見沼代親水公園駅の約9.7kmを結ぶ日暮里・舎人ライナーは、2008(平成20)年に開業した。

 同線の沿線は平成の30年間で宅地化が一気に進展。しかし、地域住民はマイカーもしくは路線バスを利用するしかなく、朝の通勤ラッシュ時間帯は都道58号線(通称:尾久橋通り)が日常的に渋滞していた。

 そのため、バスの定時運行に支障をきたし、代替交通として鉄道路線の新設が模索されてきた。一時期は地下鉄を建設する計画も浮上したが、需要予測と建設費の兼ね合いもあり、新交通と呼ばれる現行の鉄道路線に決定している。

 東京都は日暮里・舎人ライナーの開業と同時に、ほぼ同じルートを走る都バスの「里48」を廃止する予定にしていた。しかし、東京都の計画は大きく狂うことになる。

 東京都が読み誤ったのが、沿線の宅地化が想像以上に進展したことだった。それまで日暮里・舎人ライナーの沿線宅地化は農地が広がり、人口は少なかった。これが開業前後から東京都の予測を上回るペースで進展。その勢いは開業も止まらず、沿線人口は増え続けた。

 以前ほどの勢いはないものの、宅地化は現在進行形で進んでいる。沿線人口が増えれば日暮里・舎人ライナーの利用者も増える。それは数字にも表れている。開業年となる2008年度の輸送人員が1786万人。それに対して、コロナ前の2019年度の輸送人員は約3321万人。倍近くにも増えた。

 沿線の宅地化が急速に進んだことも日暮里・舎人ライナーが混雑している理由だが、そのほかにも埼玉県川口市・草加市の人口増も日暮里・舎人ライナーの混雑を激しくしている理由とされる。

 日暮里・舎人ライナーは東京都内しか走っていないが、北端の見沼代親水公園駅から徒歩数分で埼玉県川口市・草加市となる。そのため、川口市や草加市から見沼代親水公園駅に発着するバスも運行している。こうした地理的な要因もあり、川口市・草加市の通勤・通学者が見沼代親水公園駅を利用することも多い。

 朝のラッシュ時間帯には、始発駅の見沼代親水公園駅ですでに満員状態になってしまうことは珍しくない。とても途中駅から乗車できるような状況にはなく、その状態は終点の一駅手前となる西日暮里駅まで続く。