日暮里・舎人ライナー「輸送人員倍増」も 都が大規模予算を割けない複雑事情

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日暮里駅と見沼代親水公園駅を結ぶ日暮里・舎人ライナーの輸送人員が倍増している。混雑は激化したものの、東京都交通局は大規模な予算を割いていない。なぜか。

増発対応も限界

見沼代親水公園駅は足立区に所在するが、徒歩数分で埼玉県川口市・草加市に入る。現在、埼玉県では日暮里・舎人ライナーのを延伸も議論されている(画像:小川裕夫)
見沼代親水公園駅は足立区に所在するが、徒歩数分で埼玉県川口市・草加市に入る。現在、埼玉県では日暮里・舎人ライナーのを延伸も議論されている(画像:小川裕夫)

 せっかく東京都が整備・運行する鉄道路線なのに、沿線住民が利用できなければ意味がない。日暮里・舎人ライナーの激しい混雑は、行政問題にも発展していく。沿線住民から混雑対策を求める陳情があり、足立区・荒川区などは対応に追われることになった。

 ちなみに、日暮里・舎人ライナーは足立区・荒川区のほか北区も通過する。しかし、北区に駅はなく、区域の隅をかすめるにすぎない。そのため、北区では日暮里・舎人ライナーの混雑が問題視されることはほとんどない。

 足立区・荒川区からの陳情もあり、東京都交通局も日暮里・舎人ライナーの混雑問題に真正面から向き合わなければならなくなった。

 これまでにも東京都は日暮里・舎人ライナーにまったく取り組んでこなかったわけではない。開業からわずか4か月後に増発のダイヤ改正を実施。それでも混雑の緩和には至らず、増発のダイヤ改正を繰り返した。しかし、それ以上に日暮里・舎人ライナーの沿線人口が増加してしまったのだ。

 その増発も限界を迎える。日暮里・舎人ライナーは無人運転のため運転士を養成する必要はない。昨今、鉄道業界は慢性的な人手不足に悩まされているが、それとは無縁だ。

 それでも増発するには、車両そのものを増やさなければならない。車両を増やすには、車両基地を拡張する必要がある。しかし、東京都交通局が日暮里・舎人ライナーに対して大規模な予算を割けない複雑な事情があった。それは、

「日暮里・舎人ライナーの混雑がほぼ朝に限定されている」
「日暮里駅から見沼代親水公園駅という逆方向への需要がない」

からだ。

 朝のラッシュ時を除けば、日暮里・舎人ライナーの混雑は見られない。それどころか閑散路線に早変わりしてしまう。また、日暮里駅から見沼代親水公園駅方面へと向かう路線の需要が少ないので、朝ラッシュ時は東京屈指の混雑路線なのに、全体的に赤字路線という状況を生み出している。

 そうした事情もあって簡単には車両を増やせず、これ以上の増発も難しかった。東京都交通局はラッシュ時間帯の利用者を少しでも分散するべく、始発時間を繰り上げることでラッシュ時間帯の混雑を分散させる取り組みを実施。それでも抜本的な解決になっていない。