ロシア「自滅説」はいずこへ? サハリン2「接収」で反撃、退路絶たれた日本のエネルギー政策の行方とは

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プーチン大統領が、「サハリン2」の事業主体をロシア企業に変更することを命じる大統領令に署名した。日本企業も出資する同プロジェクト。今後どうなるのか。

制裁参加も、権益は維持したい政府

高止まりする燃料価格のイメージ(画像:写真AC)
高止まりする燃料価格のイメージ(画像:写真AC)

 3月16日の参院経済産業委員会ではこの問題が取り上げられたが、経済産業省の担当者は「現時点で操業に大きな影響はない」と説明。萩生田光一経済産業相は供給が途絶した場合には

「まず事業者間でのLNG融通、他国やスポット市場からの代替調達の強化、欧州を含め世界的な争奪戦も否定できないため、その点なども注視する」

と述べた。

 実質、これから不足分を購入する方法を探るが購入できるかはわからないと言っているようなもので、供給に対する不安はかえって高まった。

 今後の動向が不安視されるなか、5月25日にはロシアのウォロジン下院議長が

「日本や英国などはロシアをののしりながら、巨額の配当を受け取っている」

として、サハリン2のガスプロムの出資率を引きあげることを求める発言をしている。さらに、この5月末には撤退を表明していたシェルが、インドの石油天然ガス公社などに権益を売却する交渉を行っていることをロイター通信が報じている。

 シェルが早々に撤退を表明するなか、ウクライナ支援勢力のみならずロシアからも非難されつつ、日本企業が立場を明確にしなかったのは、サハリン1・2が

「日本のエネルギー政策上欠かせないもの」

だからだ。

 いずれも出資によって権益を有しているために、長期的な資源の引き取り権が確保されている。つまり、現在のようにエネルギー価格が高騰している時期には市場価格より安価で調達できる。エネルギー自給率が10%程度にすぎない日本にとっては、絶対に手放せない権益なのだ。

 岸田政権は開戦以降、「ウクライナがかわいそう」という感傷的な国内世論と米英に追従する形で、対ロ制裁を実施してきた。ところが一方、6月7日に閣議決定した2021年度版のエネルギー白書で、サハリン1・2を

「エネルギー安全保障上、極めて重要なプロジェクトだ」

と明記。制裁には参加するが、権益は維持したいという“ちぐはぐ”な方針を進めてきた。

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