ジャカルタMRT建設、「オールジャパン体制」に暗雲 現地に漂う日本への失望とは

キーワード :
, , ,
ジャカルタのMRTは2012年に着工し、2019年に開業した南北線フェーズ1を皮切りに、現在は2027年頃の一部開業を目指して、南北線フェーズ2Aが日本のODAで建設中だ。しかし、そこに暗雲が立ち込めている。一体何が起きているのか。

渡英・渡仏で取り付けた建設協力

MRT南北線の車両。日本の標準的な通勤電車の規格をほぼそのまま海外に導入した数少ない例(画像:高木聡)
MRT南北線の車両。日本の標準的な通勤電車の規格をほぼそのまま海外に導入した数少ない例(画像:高木聡)

 2022年5月、ジャカルタ特別州知事のアニス・バスウェダンとMRTジャカルタ(MRTJ)ウィリアム・サバンダル社長が欧州へ飛び立った。行き先はイギリスとフランス。この訪問で、英Cross Rail Internationalと仏アルストムおよびタレスから、MRT東西線建設に関わる協力を取り付けた。

 前者は同国運輸省傘下の政府系鉄道コンサル会社である。アルストムは、2021年にボンバルディアの鉄道部門(ボンバルディアトランスポーテーション)を合併し、世界第2位に躍り出た、言わずと知れた巨大鉄道メーカー。

 航空宇宙、防衛分野大手のタレスは、鉄道関連では信号・通信を中心とした交通システムの分野で世界的に著名なメーカーである。なお、タレスの交通システム事業は日立の子会社、日立レールに買収されることが既に発表されている。

MRT建設、オールジャパン体制に暗雲

自動券売機は日本と言うよりも、アジアの都市鉄道でよく見られるタイプのもの(画像:高木聡)
自動券売機は日本と言うよりも、アジアの都市鉄道でよく見られるタイプのもの(画像:高木聡)

 インドネシアの首都・ジャカルタの大量高速輸送(MRT)は2012年に着工し、2019年に開業した南北線フェーズ1(ルバックブルス~ブンダランHI:15.7km)を皮切りに、現在は2027年頃の一部開業を目指して、南北線フェーズ2A(ブンダランHI~コタ:6.3km)が日本の政府開発援助(ODA)で建設中である。

 これまでに南北線事業へ供与された円借款総額(供与限度額ベース)は、およそ1900億円にのぼる。これらは日本タイドの調達条件とされ、オールジャパン体制での鉄道パッケージ輸出の初の事例として注目された。日本タイドとは、当該プロジェクトに対し、日本の企業しか応札できないという仕組みである。

 これを弾みに、東西線事業に関しても事前準備調査(F/S)を終えている。東西線は、バララヤ~チカランを結ぶ90kmにも及ぶ路線であり、ジャカルタ特別州のみならず、隣接するバンテン・西ジャワ両州にまたがる。

 このうち、ジャカルタ特別州内で完結するカリデレス~ウジュンメンテン間約32kmのうち、先行区間のカリデレス~チェンパカバル間、約20kmの基本設計および入札補助に対して、19億1900万円を上限とする円借款契約(一般アンタイド)が2015年に結ばれている。当然この流れで、本体部分についてもオールジャパン体制での着工が期待されていたが、どうやら一筋縄にはいかないようである。

全てのコメントを見る