ロシア「自滅説」はいずこへ? サハリン2「接収」で反撃、退路絶たれた日本のエネルギー政策の行方とは

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プーチン大統領が、「サハリン2」の事業主体をロシア企業に変更することを命じる大統領令に署名した。日本企業も出資する同プロジェクト。今後どうなるのか。

輸入LNGの「約8%」がロシア産

プーチン大統領(画像:pixabay)
プーチン大統領(画像:pixabay)

 電力不足が不安視されるなか、日本のエネルギー政策に新たな問題が生まれている。

 プーチン大統領が6月30日、日本の大手商社も出資している石油・天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」の事業主体を、ロシア企業に変更することを命じる大統領令に署名した。

 サハリン2はサハリン北東部で実施されており、液化天然ガス(LNG)の出荷は2009年3月から始まっている。共同運営として、日本企業では三井物産、三菱商事が参加。プラント建設工事には千代田化工建設と東洋エンジニアリングが参加するなど、日本とも関係が深い。

 これまで日本の輸入するLNGのうち、ロシア産の割合は例年

「約8%」

で推移してきた。

 その大部分は、サハリン2から供給されている。ロシア産のLNGは東北電力や東京ガス、大阪ガスなど多くの企業が調達している。中でも、広島ガスは調達量の半分がロシア産だった。ゆえに、供給不安の危機がより現実的になっている。

 ロシアによる「特別軍事作戦」の開始以降、サハリン2の問題は注視されてきた。イギリスの石油大手シェルは開戦直後の2月28日、サハリン2と、ロシア~ドイツ間のパイプライン「ノルドストリーム2」への関与を停止した。

 サハリン2の出資割合は、ロシアの国営ガス大手ガスプロムが約50%、シェルが約27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%となっていた。シェルの撤退表明に対して日本側2社は、撤退・継続を明言することを避けた。

 3月時点では、財界での意見も割れた。経済同友会では米英企業と同じく撤退をすることを主張。3月15日には桜田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス グループCEO)が

「ロシアが国際法違反を繰り返しながらも、日本が何もなかったかのように取引していくことは多分考えられない」

と発言している。

 対して日本商工会議所の三村明夫会頭(日本製鉄社友名誉会長)は「我々の生活に重大な影響を与えるものだ」とし

「仮に日本が出資を引きあげた場合にそのエネルギーはどこに行くのか、恐らく中国に行くのではないか。ロシアを困らせることにはならない」

と事業の継続を主張している。

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