都営新宿線「新駅構想」は結局消えたのか? 本八幡駅手前に位置、建設費は数百億円のドタバタ顛末

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10年以上前まで、市川市議会で議論が盛んだった都営の新宿線「新駅」。その現在とは

千葉高速鉄道中止は追い風か

JR船橋法典駅とJR市川大野駅の位置関係(画像:(C)Google)
JR船橋法典駅とJR市川大野駅の位置関係(画像:(C)Google)

 ただし先に掲げた4項目を見れば分かるように、(仮)大和田駅にとって千葉高速鉄道中止はむしろ追い風かもしれない。

 市側の答弁を「逆手」に取れば、

「新宿線のさらなる延伸の推進はもう控えていない」

という意味に転じる。大きな障壁がなくなった瞬間だ。加えてこれと連動して「4」の「JR武蔵野線での新駅設置」も極めて困難になった。

 こちらの新駅設置構想は、千葉高速鉄道と武蔵野線との交差部分に建設する乗換駅が大前提で、JR船橋法典駅とJR市川大野駅との中間地点辺りを想定していた。だが千葉高速鉄道計画がなくなり、その結果、新駅設置の重要度は相当低くなってしまった。

 この武蔵野線新駅構想については元市長が一時期かなり前のめりとなり、この地一帯にニュータウンを造り、同市の人口増のけん引役にするともくろんでいた。

 そしてJR東日本は多大な恩恵を受けるはずとして、同社に建設費の大半出すように打診したようだが、時はすでに2010年代半ばで、高度経済成長期を地で行くような時代錯誤的な大風呂敷に、「採算が合わない」と同社は聞く耳を持たなかったらしい。

難関の「シールド工法」も新技術でクリア

シールド工法で完成したJR京葉線のトンネル(画像:土木学会)
シールド工法で完成したJR京葉線のトンネル(画像:土木学会)

 残る障壁は「1」と「2」の技術的な課題で、難関は

「シールド工法の地下鉄トンネルを途中で解体し拡張など可能か」

という点だ。

 巨大な穴掘り機を前進させ、地中にチューブ状のトンネルを掘る工法で、トンネル壁面を「セグメント」という円弧状の鉄筋コンクリート製ブロックでがっちりとはめながら落盤を防ぎつつ、トンネルを掘り進むのがシールド工法である。

 セグメントはリング状となって地下の土砂の圧力に耐えているので、外せばトンネルが崩落する危険性が高く既存のシールド工法トンネルへの拡張工事は不可能と思われていた。だが2015年に東京メトロはシールド工法で造った東西線木場駅の解体・拡張工事を実施しており、すでに不可能ではなくなっている。

 このように懸案事項もなくなり、市の中心部・本八幡にも近く、都心へのアクセスも抜群となれば、実現に向け一歩前進と考えたいところだが、実はこれが一筋縄にはいかないらしい。何度も言うように新宿線は「都営」だからだ。

 まず、東京都内ならまだしも、千葉県内に都の税金を投入して新駅を建設するのは、あまりにも筋違いで、また越権行為でもある。となれば市川市や千葉県が100%資金を捻出するのが大前提で、建設費は数百億円に達すると見られている。ただし新駅設置で地価が上がり、人口も増えて市内の経済が活性化すれば、税収もアップするため、この程度の投資額であれば比較的短期間で回収できるだろう。

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