都営新宿線「新駅構想」は結局消えたのか? 本八幡駅手前に位置、建設費は数百億円のドタバタ顛末

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10年以上前まで、市川市議会で議論が盛んだった都営の新宿線「新駅」。その現在とは

10年以上前に市は設置検討調査を実施

市川市役所(画像:(C)Google)
市川市役所(画像:(C)Google)

 ところが(仮)大和田駅新設に関して市側の腰はなぜか重い。公開された市議会議事録を見ると、これに関連するものは、2010(平成22)年9月22日が最新というありさまだ。換言すればこれ以降、

「12年近くも議題にすら上がっていない」

ことになる。

 気になる中身だが、市民からの強い要望があったからか、市側は一応2009年にコンサルタント業者に委託して、前述の「新駅候補地」における設置検討調査を実施し、そこから導かれた市側の考えを当時(2010年9月22日)の状況を踏まえて表明している。

 要約すると、

1.既存地下鉄への新駅設置事例が都交通局にはほとんどない
2.特にシールド工法のトンネルでの新駅設置の場合工事が特殊となる
3.新宿線のさらなる延伸(本八幡駅~新鎌ヶ谷駅約9.3km)の推進を控えている
4.JR武蔵野線市川大野駅~船橋法典駅間の新駅設置の要望もある

の4点で。これに基づき「新たな乗降客需要を喚起するためのまちづくりの模索と、鉄道ネットワークの整備という観点が必要」とし、さらに「引き続き社会情勢の動きや本市の財政状況等を見極めながら総合的に判断し、取り組んでまいりたい」と締めくくる。

 相変わらずの「お役所」的な回答は仕方ないが、額面どおりに捉えれば、むしろ肯定的と見るべきだろう。

消えた「東京10号線延伸新線」

東京10号線延伸新線ルート図(画像:鎌ヶ谷市)
東京10号線延伸新線ルート図(画像:鎌ヶ谷市)

 答弁から約12年が過ぎ、この間に新駅設置構想を取り巻く情勢もだいぶ様変わりした。

 中でも強烈だったのが新宿線のさらなる延伸、いわゆる「東京10号線延伸新線」が正式に終止符を打ったことだ。本八幡駅で終点となっている新宿線は、本当はさらに北部の千葉ニュータウンまで伸びることを前提に、1960年代後半に構想された。

 高度経済成長の中、首都圏の住宅不足解消のため、東京区部の辺縁に巨大ベッドタウンをいくつも造成したのは周知のとおりだ。千葉ニュータウンはこの典型で、都心とのアクセス路線として東京10号線と、京成線京成高砂駅(葛飾区)から分岐し松戸・鎌ヶ谷方面へと西進する北総鉄道北総線(現在運行中)の2本立てを想定した。

 東京10号線の実現にあたって政府は東京都と千葉県にも協力を要請し、最終的に本八幡駅以北の路線を千葉県が「千葉高速鉄道」として運営し、その一方千葉県の領域ながら同駅以南、篠崎駅に通じる区間約2.8kmを都が受け持つということで一件落着のはずだった。

 だが、千葉県が受け持った千葉高速鉄道は棚上げに。バブル崩壊で県財政は悪化し、さらに経済情勢・人口動態の変化や建設費高騰(当時約1400億円と試算)で採算性にも赤信号がともってしまった。加えて、先行運行した北総鉄道とも利用客を取り合う恐れもある、というマイナス要因が噴出したからだ。

 約束どおり新宿線を千葉県内まで延伸した東京都にとっては、ある意味「はしごを外された」面持ちだろう。そして残念ながら2013年9月、千葉県、市川市、鎌ヶ谷市の3者からなる「東京10号線延伸新線促進検討委員会」が正式に解散する。

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