驚異的な熱効率! 蒸気機関に替わる革新の「ガスエンジン」19世紀の誕生ルーツをたどる
19世紀に革新をもたらした動力機関「オットー・ランゲン・ガスエンジン」。その誕生の歴史をたどる。
1869年パリ万博でゴールドメダル受賞

1867年のパリ万国博覧会、それまでの蒸気機関に替わる新時代の動力機関が見事にゴールドメダルを受賞した。その名は「オットー・ランゲン・ガスエンジン」。これは19世紀に革新をもたらした動力機関の物語である。
オットー・ランゲン・ガスエンジン。その実物大動態レプリカは、一見するとエンジンというよりはポンプのようなルックスであり、その構造理論は極めて独創的かつ先進的だった。それは当時としては驚異的な熱効率8%(当時の標準的な蒸気機関の2倍近い数字)を実現していたことにも表れていた。
このエンジンを開発した人物の名はニコラス・アウグスト・オットー。1832年生まれのドイツ人技術者である。彼の名前は後にオットーサイクル、すなわち4ストロークサイクルの内燃機関を世界で初めて実用化したとして歴史に残ることとなる。
オットーは少年時代から機械全般に興味を抱いていたのだが、工学関連の高等教育に接したことはなく、20代の終わりまでは食料品店の営業マンをしていたと言われている。1860年頃、営業先のとある街で当時市販化され始めていたジャン・ジョセフ・エティエンヌ・ルノワール考案のガスエンジンが動いているのを初めて見た。
ルノワールのガスエンジンは、外観および機械構造的には、1860年の時点でほぼ完成の域にあった横型レシプロ複動蒸気機関をそのまま転用したものであり、シリンダー容積がおおむね2万ccという大型機でありながら、最高出力は2hp程度、熱効率はやっと4%をクリアできるだけのレベルに止まっていた。