かつては「広大な紡績工場の街」 2路線が交わる足立区中央部が、いちばん契約された街ランキング「14位→4位」に急上昇したワケ
居住地選びの新たな基準

今回の急上昇は、一過性の流行や人気という言葉だけで片付けられるものではなさそうだ。むしろ、東京という都市のなかで、人々が住む場所を選ぶ基準そのものが移り変わってきた結果と見るほうが、より実態に即している。背景にあるのは、移動にかかる時間的な効率と、日々の暮らしの快適さ。この両方を天秤にかけた、働く人たちの極めて現実的で賢い選択の結果なのだろう。これまでの住まい選びを振り返ると、
・都心の高い家賃に耐えて便利さを取るか
・コストを抑えるために不便さを我慢して郊外へ行くか
という二者択一の空気が強かったように思う。しかし、交通網の高度化がそうしたこれまでの選び方を少しずつ変えてきた。いまの若いワーカーたちを見ていると、直通運転の広がりによって移動の質が守られ、同時に駅のまわりの開発で綺麗な住まいが手に入る中間のエリアに対し、費やした時間やおカネに見合うだけの高い価値を感じているようだ。
すでに葛西のように、都心への通いやすさと家賃の安定感という面で確かな立ち位置を築いている街がある。その一方で、西新井はこれまで遅れていた新しい住まいの供給を、新設されたインフラや新しい建物によって一気に取り戻し、評価を上げてきた。
家賃中央値という、実際の需要が最も厚いボリュームゾーンの価格帯を維持しながら、電車の乗り入れによる移動の進歩と、心地よい住環境を高いレベルで同時に差し出せる市場ができあがった。これこそが、今回の大きな順位上昇の本質といえるのではないか。
こうした住まい選びをめぐる人々の動きは、これで終わりというわけではないだろう。これからも周辺エリアの進み具合や、鉄道の輸送動向、あるいは新しく出てくる物件の量といった様々な要素と絡み合いながら、都市のなかで住みやすい場所の境界線をさらに外側へと押し広げていくことになると思われる。