かつては「広大な紡績工場の街」 2路線が交わる足立区中央部が、いちばん契約された街ランキング「14位→4位」に急上昇したワケ
都心直結が縮める距離

西新井の立ち位置を変えた一番の要因は、交通網が都心へまっすぐつながり、その結びつきがより強くなったことにある。東武スカイツリーラインが日比谷線(中目黒方面)や半蔵門線(渋谷・東急田園都市線方面)と直通で乗り入れたことで、都心の主なビジネス街へ向かう時間が短くなり、乗り換えの手間も減った。
こうした相互乗り入れの広がりは、鉄道会社側の狙いが大きく変わってきた証拠でもある。自分の路線だけで完結する輸送の仕事から、他社との連携による広いネットワークづくりへとかじを切った。移動の効率を高めることで沿線全体の価値や住む場所としての魅力を引き上げるような、面としての価値創造へ役割を移しつつある。
さらに、伊勢崎線と大師線が交わる結び目としての、駅のつくりの良さも見逃せない。西新井駅は方向ごとに線路が並ぶ複々線の仕組みになっており、急行や準急と、各駅に止まる普通列車が、同じホームの向かい合わせでスムーズに乗り換えられる。かつて私鉄のなかでいち早く自動改札機の試験導入を行った歴史が示すように、利用者の使いやすさに配慮したインフラの工夫は、移動にともなう体や心の負担を軽くしてくれる。この変化が、人々の間で
「移動コストの再評価」
を促すことになった。電車の本数が多く、大手町まで直通で約20分というアクセスの良さを誇る葛西がトップに立つなかで、西新井も路線の広がりによって、十分に都心へ通える時間の中に組み込まれた。結果として、家賃の額と見比べたときに、選ばれる順位が上がってきたのだ。ここで大切なのは、時刻表の数字が良くなったこと自体よりも、都心との
「心理的な距離」
が縮まったことだろう。広範な移動手段がうまく連動したことで、これまでは通勤圏と捉えづらかった外側の地域が、中心側へと自然に組み込まれ直している。住むのに適した場所が、確実に外へと広がっている形だ。