地方の「老朽駅舎」が超簡素に変貌! コスト削減の痛い代償、「トイレがない」と悲鳴も
簡素化の「ローカル基準」

老朽化した駅舎の簡素化は、JRの他社でも実施されている。
JR西日本米子支社管内では、2020年以降121駅のうち半数以上を対象に地元自治体との協議を実施している。『山陰中央日報』2020年9月4日付朝刊によると、同支社の場合は対象となる駅の基準と対策を次のように定めている。
●簡素化の基準
・1日平均乗降客数3000人未満、築60年以上
●改修の方法
1:JRが簡素な駅舎に建て替える
2:地元自治体が譲渡を受けて改修
3:JRが解体し、地元自治体が新築
管内のうち、鳥取市内では2021年度以降、11駅が簡素化対象となり、利便性の低下が懸念されている。そのため鳥取市議会でも駅舎を市の所有として維持することが検討されたが、新たに実行するのは困難と判断され、JR主体で整備し、利便性の維持を要望するにとどまっている。
自治体が費用負担した例も

一方、山陰本線の荘原駅(島根県出雲市)と大山口駅(鳥取県大山町)では、どちらも2020年3月に自治体が費用を負担して駅舎をリニューアルしている。
自治体が費用負担に踏み切った理由はさまざまあるが、荘原駅の場合は、すでに市内のJR無人駅のトイレを市が設置しており、簡素化では待合室の縮小とともにトイレも撤去が予定されたため、利用者が困ると判断。約3000万円を投じてのリニューアルが実現した(『読売新聞』2018年12月12日付朝刊)。
自治体が駅舎整備を中心に再開発を実施する事例もある。
宮崎県小林市の吉都線小林駅では、2014年に市が駅舎と駅舎西側のタクシー待機場になっていた土地を購入し、駅舎の建て替えや自由通路整備など総事業費約6億1400万円の事業を実施。観光交流センターの設置のほか、別の場所にあったバスセンターの駅前への移転も実現し、中心市街地の活性化が図られた。
ただ、駅舎を含めた整備は実現したものの、JR九州が2018年3月のダイヤ改正で普通列車の削減を行ったために、鉄道の利便性が低下し、整備の際に想定されたほどの効果が出ていないとも指摘されている(『宮崎日日新聞』2018年5月24日付朝刊)。