なぜ日産は英国工場を「中国勢」へ開放するのか? 稼働率「45.5%」の先で動き出した、工場共有という未来
2025年に稼働率が45.5%へ低迷した日産の英国工場で、中国の奇瑞汽車が委託生産に乗り出す。21%の追加関税に直面する中国勢の現地化の波と、伝統メーカーのアセット有効活用。自社生産という常識を覆す「水平分業」への移行は、自動車産業にどのような地殻変動をもたらすのか。その深層に迫る。
現場の協力と市場での競合

日産と奇瑞によるサンダーランド工場の共同利用については、2026年4月に英フィナンシャル・タイムズ紙が報じていた。利害の一致が両社の歩み寄りの背景にあるが、将来にわたって常に同一の戦略方針をとるわけではない。
奇瑞はすでに日産の欧州販売規模を上回る勢いを見せており、今後、両社の販売面での競合関係が本格化していく可能性は十分にある。日産にとって委託生産は工場の稼働率を改善させる大きな要因となる一方、関与が深まることは、自社ブランドの販売戦略とのバランスを常に考慮していく必要性を生じさせる。
日産が長い歳月をかけて築き上げた生産基盤や高度な工場管理ノウハウを、奇瑞は自前の初期投資を抑えながら活用することができる。これにより、奇瑞は短期間で欧州での供給体制を強化していく。これは、現代のグローバルビジネスにおいて広く見られる
「製造の基盤では協力し、市場の最前線では競合する」
という協調的競争のリアリティを物語っている。日産にとっては長年培ったモノづくりの強みを維持し、生産プラットフォームとしての価値を高める機会であり、奇瑞にとっては独自のスピード感を欧州で具現化する足場となる。
今後の販売規模がさらに拡大すれば、奇瑞が将来的に新たな独自の生産拠点を構える展開も考えられる。現在の関係性は、協力と競争という複数のレイヤーが複雑に重なり合いながら発展していく、自動車産業の新しい共生のあり方を示している。