なぜ日産は英国工場を「中国勢」へ開放するのか? 稼働率「45.5%」の先で動き出した、工場共有という未来
2025年に稼働率が45.5%へ低迷した日産の英国工場で、中国の奇瑞汽車が委託生産に乗り出す。21%の追加関税に直面する中国勢の現地化の波と、伝統メーカーのアセット有効活用。自社生産という常識を覆す「水平分業」への移行は、自動車産業にどのような地殻変動をもたらすのか。その深層に迫る。
新興勢力と伝統企業の需給

中国から輸入されるEVに課される高額関税の回避や輸送コスト削減、さらには地政学リスク対応などを目的として、新興メーカーによる欧州現地での生産体制整備が加速している。
直近で明らかとなった事例には、中国・上海汽車傘下MGによるスペイン・ガリシア州での工場建設や、吉利汽車(ジーリー)によるフォード・スペイン工場内の組立工場取得がある。さらに小鵬汽車(シャオペン)は独・フォルクスワーゲンと欧州内の遊休工場の買収や借用を協議しており、比亜迪(BYD)もステランティスなどと生産拠点取得を協議中だ。またステランティスは東風汽車と合弁事業を立ち上げ、フランスで生産する可能性を示している。
一方で、欧州市場に古くから拠点を構える欧州や日本メーカーの一部工場では、車種の絞り込みや電動化への移行にともない稼働率の低下がみられる。地域経済や雇用を支える拠点を維持するための固定費負担は小さくないが、この需給のギャップが新しい産業の動きを生み出す要素にもなっている。
保護主義的な通商規制は、結果として国境や陣営を越えた企業間の生産融通を促す引き金となった。「工場を必要とする新興勢力」の参入スピードへの要求と、「余力を残す伝統的メーカー」の維持コスト低減の思惑が結びつき、既存設備のシェアリングという新たな需給マッチング市場を形成している。新工場を建設するよりも既存のインフラを活用する方が時間やコスト、労力を抑えられるため、この合理的なアプローチが業界全体に浸透し始めている。