なぜ日産は英国工場を「中国勢」へ開放するのか? 稼働率「45.5%」の先で動き出した、工場共有という未来

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2025年に稼働率が45.5%へ低迷した日産の英国工場で、中国の奇瑞汽車が委託生産に乗り出す。21%の追加関税に直面する中国勢の現地化の波と、伝統メーカーのアセット有効活用。自社生産という常識を覆す「水平分業」への移行は、自動車産業にどのような地殻変動をもたらすのか。その深層に迫る。

稼働率改善と関税回避の合致

英国自動車工業会(SMMT)が発表した2026年5月の乗用車新車登録台数(画像:SMMT)
英国自動車工業会(SMMT)が発表した2026年5月の乗用車新車登録台数(画像:SMMT)

 両社による協議は、生産体制の適正化を進める日産と、現地生産拠点を求める奇瑞の方向性が合致した結果といえる。

 日産・英国サンダーランド工場の稼働率は2025年に45.5%となり、2023年から8.7ポイント下がった(『日本経済新聞』2026年6月4日付け)。2025年の生産台数は約27万台で、50万台を超えていた2010年代前半からほぼ半減している。欧州での車種絞り込みや急速に進む電動化へのシフトにともない、生産能力に余力が生じている状況だ。日産は、この設備を高度な技術を持つ製造インフラとして外部へ開放し、固定費の低減とアセットの有効活用を進める柔軟性を見せている。

 工場敷地内には複数の建物があり、それぞれ独立した生産ラインがあることから、委託生産を受け入れやすい環境が整っている。日産はふたつある生産ラインを第2生産ラインへ集約する方針を明らかにしており、空いた第1生産ラインで奇瑞向け委託生産を2027年度に開始することを目指す。日産が工場設備を所有し続け、地域における従業員の雇用を維持する仕組みだ。

 一方の奇瑞は、英国への市場参入からわずか2年で、傘下ブランドを合計した英国シェアが約7%に達した。英国自動車工業会(SMMT)によると、2026年5月までの奇瑞傘下ブランド「Jaecoo 7」の累計販売台数は2万台超を記録している。日産・キャシュカイを上回り、モデル別ランキングで3位に躍進した。また欧州自動車工業会(ACEA)によれば、2026年4月の欧州販売台数は前年から約3倍となる1万4346台となり、日産をはじめ、スズキ、ホンダなどの日本メーカーを上回る規模となっている。

 この急成長に対し、現地生産の能力確保が追いつかないなか、欧州域内に輸入される電気自動車(EV)に課せられる21%の追加関税が現地化をさらに後押ししている。奇瑞は日産の旧スペイン工場における現地ブランド・エブロとの合弁事業ですでに現地生産を行っているが、さらなる拠点確保に向けて、一から工場を建設する時間的・財務的リスクを回避し、既存のインフラを活用して迅速に市場に適応するアセットライト戦略を選んだ。

 資本提携や従来の系列関係を超え、互いの過不足を埋める機能補完型の新しい提携スタイルが、双方の思惑を自然に結びつけている。

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