なぜホンダ・日産は「電池工場計画」を見直したのか? 経産省が描く「5兆円市場」の次の一手
国内自動車大手のEV電池工場計画見直しが広がる中、経済産業省は2035年に関連売上高を約5兆円へ伸ばす新戦略を出した。中国企業が得意とする大量生産の「数の勝負」から脱し、AIデータセンターやインフラ向け等の高付加価値市場へ。車載技術を武器に、産業の枠を超えて動き出した日本勢の戦い方を追う。
身軽さで渡り合う新製造モデル

日本企業による戦い方の転換を象徴するのが、「スイフトファブ」と呼ばれる新しいものづくりの形だ。電池サプライチェーン協議会(BASC)の活動をきっかけに、日立製作所やリコーなど9社が手を結び、共同事業体「スイフトファブエナジーシステムズ」を2025年12月に設立。現場の仕組みを根底から変える役割を担っている。
提案されているのは、生産ラインをブロックのように細かくわけ、あらかじめ組み立ててから顧客の工場で手軽につなぎ合わせる仕組みだ。巨大工場への巨額投資に依存してきた従来のやり方に風穴を開け、設備費用を約7割削減、これまで2~3年はかかっていた工場立ち上げ期間を半分に縮める。
これにより、自動車部品サプライヤーが抱えがちだった固定費リスクを分散し、多品種少量生産や市場の急な変動に柔軟に対応できる機動的な製造環境が整う。数と安さで攻める中国企業に対し、身軽さで渡り合う狙いだ。
当面は国内の電池メーカーへ販売し、将来的には欧米やインドなど海外展開も視野に入るが、経済安全保障の観点から中国企業への販売は想定されていない。ただし、顧客から中国企業を除外する中での市場の広がりや、目標とする費用削減の実現性、現場への浸透度合いなど、今後の普及に向けては慎重に見極める必要がある。