BYDが欧州「4拠点」へ接近――ステランティス工場再編が映す、「中国EV」の侵食圧力

キーワード :
, ,
EV減速で欧州メーカーが30%もの過剰能力に喘ぐなか、BYDら中国勢がその遊休拠点を「市場アクセスの武器」として奪取し始めた。37兆円の投資で自立を期す欧州だが、現実は雇用のために主導権を明け渡す矛盾に直面。拠点の譲渡が産業主権の分離を招くという、自動車産業を根底から揺さぶる地殻変動の本質に迫る。

産業の知能を欧州に残す決断

中国企業の欧州工場買収(画像:Merkmal編集部)
中国企業の欧州工場買収(画像:Merkmal編集部)

 欧州で表に現れ始めている課題は、EV市場の失速にともなう余剰能力の話に留まるものではない。より本質的な変化は、産業を動かす力が既存のインフラを通じて、中国側へと移り始めているという冷徹な現実にある。

 中国メーカーは、欧州が長年積み上げてきた生産の土台を借りることで、最短の道のりで市場への浸透を図る。これに対し、欧州側は個々のメーカーの枠を超え、国や地域全体として、将来どのような姿を目指すべきかという難しい判断の渦中にあるのだ。

 働き口を守り続けることと、産業の主体性を保つこと。このふたつの目的は、今後さらにぶつかり合いを深めていくに違いない。世界で親しまれてきた欧州メーカーというブランドの輝きだけで、産業の土台をすべて守り切れる時代は過ぎ去りつつある。生産の拠点が守られる一方で、その頭脳となるソフトウェアやデータの管理、技術の標準を形作る領域の主導権が外へ流れていけば、産業の中身そのものが別のものへと変わってしまう。今、欧州に問われているのは、

「どの役割を域内に残すべきか」

という見極めである。それは拠点を閉めるか残すかといった、ふたつにひとつの議論ではない。開発や製造、あるいはユーザーが手にする体験を支えるデジタル基盤など、産業の自立を支える力をどうにかして守り、次なる競争に繋げていくかという視点だ。

 欧州は今、単に物をつくる場を維持する段階を超えて、産業の知能とも呼べる領域を自分たちの手に留められるかという、新たな局面に立たされている。

全てのコメントを見る