中古車価格を歪める「最初の1桁」――選び方で「2.7万円」も損する? 米480万件の分析が示す価格の分岐点
中古車市場では走行距離「4万9999マイル」と「5万マイル」の境界で最大約2万7000円の価格差が生じる。最新研究は、わずかな桁の違いが価値判断を歪め、販売店の利益構造やEV評価にも影響する「数字の罠」を浮かび上がらせている。
左端の数字が生む価格の断絶

いつも2000円を払って定期的に買っているものが、たまたま入った店で1980円で売られていたとする。おそらく、多くの人が迷わず手に取るはずだ。冷静に考えれば20円ほどの差にすぎない。それなのに、その瞬間に抱く安さへの実感は、実際の差額をはるかに上回る。
こうした感覚には理由がある。数字の左端を強く意識し、それ以降の桁を低く見積もってしまう「左桁バイアス(Left-digit bias)」という心理現象だ。この場合、2000円の「2」と1980円の「1」の違いが、実質的な価格の開きを超えて脳に響いている。そして、この現象の影響は日用品の値札にとどまらない。最新の研究によれば、中古車市場における走行距離の捉え方にも、同様の傾向が見られるという。
本来、自動車は膨大な部品が少しずつ摩耗していく資産だ。その価値もまた、走った距離に合わせてゆるやかに目減りしていくのが自然だろう。しかし、現実はそうではない。例えば、走行2万1000kmの車と1万9000kmの車が並んでいたとき、買い手は数字の並びから受ける印象に強く左右される。物理的な劣化の度合いにほとんど差がなくても、そこに明確な価値の隔たりを感じてしまうのだ。
売り手側である販売店も、こうした客観的な状態とは別の、人の心にある境界線を見越した値付けを行っている。買い手は走行距離を機械の傷み具合を測る目安にしているつもりでいながら、実のところは左端の数字を、その車の格を分ける基準として無意識に扱っているようだ。