中古車価格を歪める「最初の1桁」――選び方で「2.7万円」も損する? 米480万件の分析が示す価格の分岐点
中古車市場では走行距離「4万9999マイル」と「5万マイル」の境界で最大約2万7000円の価格差が生じる。最新研究は、わずかな桁の違いが価値判断を歪め、販売店の利益構造やEV評価にも影響する「数字の罠」を浮かび上がらせている。
販売店が仕掛ける検索条件の罠

客観的に見れば、走行距離が似通った2台の車の価値は、本来ならそれほど変わらないはずだ。しかし現実は違っている。買い手は2万kmや5万km、あるいは10万kmといった区切りの良い数字をわずかに下回る車に対して、より多くの対価を支払っている。ラオ氏らの研究チームは、テキサス州で2014年から2021年の間に行われた480万件もの取引を調査した。全米の販売数の10%にも及ぶ、極めて規模の大きなデータである。
研究では、走行距離1万マイルごとに基準を置き、その前後で売れ行きがどう変わるかを詳しく突き合わせている。結果、とりわけ販売店において、基準の直前にある車は基準を少し超えた車よりも価格が高くなり、売れる数も多いことがわかった。こうした偏りは個人同士の取引よりも販売店で2倍も強く現れている。
この背景には、ネットによる在庫検索の仕組みが深く関わっている。多くのサイトでは「5万km以下」といった条件で車を絞り込む。そのため、境界線の手前にある車は、買い手の目に触れる機会が跳ね上がる。販売店側も、この仕組みを収益を伸ばす格好の機会として見逃していない。
データはさらに踏み込んだ実態を映し出している。こうした効果は走行距離が10万マイルに達したときが最も大きく、販売店は一台あたり168ドル(約2万6500円)の追加利益を得ていた。また、基準値をわずかに下回る車は、それを超えた車よりも6%も早く売れていく。
販売店がこうした個体を個人取引より4%高い割合で積極的に仕入れているのも、在庫を素早く回転させて効率よく稼ぐための筋の通った振る舞いだろう。市場の仕組みそのものが、買い手の心のなかにある偏りを利用した収益化を後押ししている。