ランドクルーザーが“90秒で消える”現実、CANインベーダーが変えた車両盗難6080件の構造と生活コストへの波及

キーワード :
海外での日本車需要を背景に、2025年の車両盗難は全国6080件、保険金約82億円に拡大。CANインベーダーによる90秒の犯行が常態化し、資産流出が構造化している。

制御と安全のトレードオフ

自動車盗難の脅威と対策。
自動車盗難の脅威と対策。

 日本損害保険協会のデータに、厳しい現実が示されている。

 盗まれた車が持ち主のもとに戻る確率は、わずか24%。4台に1台しか手元に帰ってこない計算だ。この数字の低さは、奪われた車両が日本の経済圏から切り離され、取り返しのつかない形で海外へと流れ出している実態を浮き彫りにしている。一件ごとの被害が積み重なれば、年間で82億円を超える巨額の富が失われることになる。近年の被害急増は、悪用される技術の進歩と、高級日本車の価値の高騰、そして通信規格の脆さが重なった結果といえるだろう。

 いまの法制度では、解錠ツールの所持を制限したり、不法な解体施設を見つけ出したりしても、結局は末端の実行役を捕まえるのが精一杯だ。組織の上層部は、常に手口を書き換え、大勢の人間を間に挟むことで巧みに利益を吸い上げている。個々の車両を守る努力を重ねるだけでは、犯罪組織の勢いを削ぎ、国富の流出を食い止めるには限界があるのではないか。

 これからは、個人の防犯という枠組みを超え、不法な輸出入や不透明な資金の流れそのものを封じ込める仕組みが欠かせない。経済の健やかさを守るためにも、行政や金融、物流といった各分野が手を取り合い、不正な利益を生ませない強固な壁を築くことが急がれる。

全てのコメントを見る