ランドクルーザーが“90秒で消える”現実、CANインベーダーが変えた車両盗難6080件の構造と生活コストへの波及

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海外での日本車需要を背景に、2025年の車両盗難は全国6080件、保険金約82億円に拡大。CANインベーダーによる90秒の犯行が常態化し、資産流出が構造化している。

高級車需要と通信規格の衝突構造

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 海外での日本車人気が、思わぬ形で国内の治安を脅かしている。2025年の車両盗難は全国で6080件にのぼり、保険金の支払総額は約82億円。この数字は、本来なら国内に留まるはずの富が不法なルートで外へ流れ出している、深刻な資産流出の記録にほかならない。

 現場で何が起きているのか――最近目立つのは「CAN(キャン)インベーダー」と呼ばれる手口だ。車のエンジンやブレーキを制御するCANという通信網を乗っ取る。犯行は驚くほど手際がいい。バンパーを外して配線につなぐだけで、いとも簡単にロックが解かれ、システムが支配される。2025年4月に名古屋で起きた事件では、車に触れてから走り出すまで、わずか

「90秒」

だった。もはや窃盗は個人の腕に頼る犯罪ではなく、システマチックに資源を抜き取る「作業」へと変わってしまったようだ。

 ネットを覗けば、この盗難用ツールが数十万から数百万円で売られている。一見高価だが、

・ランドクルーザー
・アルファード

が海外でどれほどの高値で取引されているかを考えれば、犯罪グループにとってこれほど実入りのいい投資はない。壊れにくく、価値が落ちにくい日本車は、もはや車という枠を超え、世界中で通用する「通貨」のように扱われている。

 メーカーも手をこまねいているわけではない。システムの改良を重ねているが、犯行グループもすぐに新しい弱点を見つけてくる。いたちごっこは終わる気配がなく、経済的な損失は膨らむばかりだ。このツケは、巡り巡って私たちの生活に跳ね返ってくる。車両保険料が上がれば、物流コストや企業の維持費が膨らみ、最終的にはあらゆるモノの値段を押し上げる要因になりかねないからだ。

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