ランドクルーザーが“90秒で消える”現実、CANインベーダーが変えた車両盗難6080件の構造と生活コストへの波及
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セキュリティ設計の構造限界

メーカー側も手をこまねいているわけではないが、CANという通信規格が抱える限界が、開発現場の足を重くしている。データのやり取りに余裕がないため、現代的な暗号化や認証技術を十分に盛り込むことが難しいのだ。たとえ指紋認証を導入したとしても、それをかいくぐって盗み出される例は後を絶たない。車内の通信網という、いわば“血管”そのものを乗っ取られてしまえば、目に見える部分での対策は、どうしても表面的なものに留まってしまう。
今のところ、主な対策はスマートキーの制御やアプリでの通知など、いわば「入られた後」の対応が中心だ。これでは犯罪側のスピードに追いつけず、根本的な弱点が残されたままになる懸念が消えない。また、ネット経由で機能を更新できる仕組みも、一長一短を抱えている。修正が素早く行える利点はあるものの、外部とのつながりそのものが、新たな攻撃の入り口になりかねないからだ。古い土台に無理やり最新のソフトを継ぎ足しているような不自然さが、かえってリスクを膨らませている側面もある。
被害の多い車種を選べば、保険料だけで数万円の上乗せを覚悟しなければならない。資金にゆとりがなければ、お気に入りの一台を手に入れることすら難しくなりつつある。こうしたコストの膨らみは、製品がもともと抱えていた脆さのツケを、消費者が肩代わりさせられている形だ。
もはや、作り手や保険会社を頼りにするだけでは足りない。盗まれた車の9割は、鍵をかけ、車内にキーがない状態だったという。これまでの常識は、もはや通用しないのだ。だからこそ、持ち主自身が守りを固める必要がある。
ハイテクな攻防の末に、今改めて注目されているのが、
・ハンドルロック
・タイヤロック
といった原始的な道具だ。安価でどこでも手に入るが、物理的に車を動かせなくする力強さがある。もちろん、こうした努力を重ねても、犯罪グループはまた新たな穴を見つけてくるだろう。彼らにとって、これは収益を最大化するための知恵比べにほかならない。
特に物流を担う企業にとって、終わりのない防犯コストは、実質的な増税と同じ重みを持つ。それは企業の利益を削り、最終的には私たちの手元に届く商品の値段を押し上げる理由となっていく。