「私は中国を称賛したい」――テスラ追随の代償「1車種23億円」、格納式ドアハンドル規制が突きつける安全基準の構造転換

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中国発の格納式ドアハンドル規制は、安全基準を軸に世界へ波及し始めている。中国は2027年からの新基準を公布し、米国でも約18万台規模のリコール検討や法案提出が進む。EV普及で広がった先進的な外観は、事故を背景に見直しが迫られ、市場やメーカーの対応コストにも影響が及んでいる。

中国が示した安全重視

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 中国の自動車に対する評価は、かつて品質の低さや模倣の多さが指摘されるものだった。しかし現在は、中国が世界を先導する場面が増えている。その象徴が、今回示された格納式ドアハンドルの安全性向上に関する法規制である。中国が世界に先んじて安全を重視する方針を明確にし、その内容も実務上の課題に踏み込んだものとなっている。

 中国の工業情報化省は2026年1月26日に、強制性国家標準「自動車ドアハンドル安全技術要求(GB 48001-2026)」を公布した。このルールは、電気自動車(EV)で広がった格納式ドアハンドルにともなう危険を抑えることを目的としている。2027年1月1日以降に中国で販売される車両は、この基準を守る必要がある。

 格納式ドアハンドルは、緊急時に素早く開けにくい点が問題視されており、死亡事故につながる恐れがあるとして、これまでも各国で懸念が示されてきた。

 規制の主な内容は、後部ドアを除く車外および車内のハンドルについて一定の条件を満たすことを求めている。まず、すべてのドアに手で直接操作できる機械式のハンドルを備える必要がある。事故や電源喪失の状況でも物理的に動作する構造であることが求められる。

 車外のハンドルは枠の近くに配置し、手を差し入れやすい隙間を確保することが必要となる。車内のハンドルについては、乗員がすぐに見つけられる機械式とし、ドア上端や縁から300mm以内に設置することが求められる。加えて、操作方法を示す中国語表示や図、識別用の記号を付すことも義務づけられている。

 この基準は、格納式そのものを直接禁じているわけではない。しかし、機械式と格納式の両方を併用する意義は小さく、実質的には使用が難しくなる内容である。テスラや比亜迪(BYD)、日産など多くのメーカーが格納式を採用しているが、この規制を受けて中国市場向けの車両仕様は見直しを迫られることになる。

 こうした動きは、中国が自国の大きな市場を背景に、業界の基準づくりに関与する立場へと移っていることを示している。見た目の先進性よりも、確実に機能する方法を重視する流れが強まっている。草案の段階から公布までが約半年と短期間で進んだ点も、事故防止に向けた姿勢の強さを示すものとして

「称賛に値する」

といえる。

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