「私は中国を称賛したい」――テスラ追随の代償「1車種23億円」、格納式ドアハンドル規制が突きつける安全基準の構造転換
重大な事故事例

格納式ドアハンドルがこれほど問題視されている背景には、中国や米国で発生した死亡事故がある。
この機構を広く広めたのは米国のテスラで、多くの車種に採用されている。表面をなめらかにすることで外観を整え、先進的な印象を与える狙いがあった。また、空気抵抗を小さくすることで走行距離を伸ばしたいEVにとって、この形状は効率面でも都合がよかった。テスラが市場の中心的な存在となったことで他社も追随し、米国に限らず中国や欧州でも採用車種が増えた。
その一方で、深刻な事故が相次いでいる。2019年にフロリダ州で発生したテスラ「モデルS」の衝突事故では、衝突の影響で火災が起きた。救助にあたった警察官や通行人がドアを開けようとしたが、ハンドルが作動せず、最終的に運転者は亡くなった。この事故以降、車内に閉じ込められる事例をめぐる訴えが続いているのだ。
中国でも同様の事態が起きている。2024年4月にはAITO(ファーウェイ)の「M7 plus」が追突事故を起こし、火災の中でドアが開かず3人が死亡した。さらに2025年にはシャオミ製のEVでも、3月と10月に死亡事故が続き、この機構の課題がはっきりした。中国政府が規制に動いたことで、一般の間でもこの構造の危うさが意識され始めている。
これらの事故は、電子制御に頼りすぎたことの影響が大きい。緊急時に救助者がハンドルの操作方法を直感的に理解できない点は、救助を妨げる重大な問題である。利用者の意識も、見た目の良さよりも、非常時に確実に動くことを重視する方向に変わりつつある。
車を個人の嗜好品としてではなく、人の移動を支える手段として捉える見方が求められている。日本では同様の事故はまだ目立っていないが、国内メーカーの採用も増え、輸入EVの普及も進んでいるため、日本の利用者にとっても無関係ではない。