欧州PFAS規制が迫る――自動車サプライヤーに広がる“素材転換”と供給網の再編圧力【連載】自動車部品業界ウォッチ(7)
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欧州のPFAS規制を契機に、自動車部品は素材や熱管理まで見直しが迫られている。EV・HVの普及で重要性が増す冷媒や絶縁材は、代替技術の開発競争が進み、2026年の審議を前に企業の対応力が収益と競争力を左右する局面に入っている。
冷媒転換を巡る技術競争の拡大

自動車の空調や熱を調整する仕組みに使われる冷媒の分野でも、規制の影響が広がっている。冷媒は熱を効率よく運ぶための気体で、現在はフッ素系のものが主流である。特にEVやHVでは、走行距離を伸ばすためにバッテリーの温度を細かく保つヒートポンプの採用が増え、冷媒の役割はより重要になっている。かつてオゾン層を壊す問題への対応としてフロンの代わりに広まった素材が、今度はPFAS規制の対象となり、次の素材への切り替えが求められている。
有力な候補のひとつが、二酸化炭素を使う「R744冷媒」である。環境への負担が小さい一方で、高い圧力をかける必要があり、従来の部品では漏れや破損を防ぐのが難しかった。しかし欧州のメーカーはこの課題を乗り越え、自国の産業を守るための標準づくりを進めている。
フォルクスワーゲンは2030年までにすべての冷媒をR744へ切り替える方針を示し、ドイツの部品メーカーであるヴィッツェンマンは高い圧力に耐える金属ホースの増産体制を整えた。これは特定の部品の入れ替えにとどまらず、車両全体の熱の扱い方を見直し、欧州独自の供給の仕組みを固める動きとも受け取れる。
日本のメーカーも独自の技術でこの競争に取り組んでいる。サンデン(群馬県伊勢崎市)は2023年に、冷媒の代わりに水を使う統合熱マネジメントシステム(ITMS)3.0を発表した。さらに、効率を高めるためにプロパンガスを併用する方式も開発している。2027年以降の市場投入を目指すこの仕組みは、部品を納める立場から、車両全体のエネルギーの使い方に関わる共同開発の相手へと役割を広げるものだ。
規制を背景に、部品メーカーが車両の中核を支える存在へと変わりつつあり、2030年以降の市場で優位を確保するための動きが続いている。