欧州PFAS規制が迫る――自動車サプライヤーに広がる“素材転換”と供給網の再編圧力【連載】自動車部品業界ウォッチ(7)
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欧州のPFAS規制を契機に、自動車部品は素材や熱管理まで見直しが迫られている。EV・HVの普及で重要性が増す冷媒や絶縁材は、代替技術の開発競争が進み、2026年の審議を前に企業の対応力が収益と競争力を左右する局面に入っている。
PFAS代替素材の開発動向

PFASは、熱や薬品、電気に対する強さが多くの素材のなかでも際立っており、厳しい条件にさらされる部品に優先して使われてきた。電子基板や半導体にも欠かせないため、自動車部品の多くがその恩恵を受けている。ガソリン車では動力の伝達や油の流れに関わる部分で重宝されてきたが、EVや燃料電池車(FCV)では、中心となる駆動用バッテリーなどの機能を保つうえで依存度が高く、対応が急がれる課題となっている。
世界の産業全体への影響は数十兆円規模に及ぶとの見方もあるが、この難局を早く乗り越えようとする動きが広がっている。住友ベークライト(東京都品川区)が開発した絶縁用難燃ポリカーボネートシートはその一例である。
これは電動車のモーターやインバーターの内部で電気を通さないために使う薄い板で、PFASを使わずにポリカーボネートを用いることで規制に対応した。同社は2026年1月に、業界でも非常に薄い0.2mmの製品の開発に成功したと明らかにした。すでに採用は広がっており、年10億円の売上を目指すとしている。素材の性能を保ちながら薄く仕上げる高い技術は、後からの追随を難しくし、市場での立場を強める要因となる。
大学などの研究機関による新しい技術も、供給網の構図を変える可能性がある。2026年2月には山梨大学、早稲田大学、信州大学の研究チームが、PFASを含まない新しい電解質膜の開発を発表した。FCVの発電を支えるこの膜は、従来のフッ素系材料を上回る性能と、厳しい条件下で10万回を超える使用に耐える強さを両立している。
規制への対応をきっかけとしたこうした素材の切り替えは、水素エネルギー分野で日本が主導的な位置を保つための有力な手段となるだろう。