高速道路に「非常電話」が1kmごとに設置されている理由――スマホがあるのに、なぜ必要? ドライバーが知らない安全対策とは

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日本の高速道路には、スマホ普及率98%でも約1km間隔で非常電話が設置される。事故や災害時、固定拠点から即座に管制室へ連絡可能なこの仕組みは、年間維持費2000億円超でも安全の投資価値を示す重要なインフラだ。

縮小の合理性と維持の必要性

視点イメージ(画像:写真AC)
視点イメージ(画像:写真AC)

 ほとんどの人がスマホを持ち、複数台を使い分ける人も少なくない現代において、非常電話の規模を縮小することは現実的な判断だ。2025年には保有率が98%に達し、社会は携帯端末があることを前提に動いている。

 この流れを反映しているのが最新の維持管理方針だ。2025年以降、NEXCO東日本管轄の北海道や東北などの降雪地帯では、一部区間で停止や撤去が順次進められている。背景には携帯電話の普及による利用減少に加え、周辺の除雪が機械化できず、管理負担が膨大になる事情がある。

 通信が届きにくいトンネルやサービスエリアを除き、維持コストが見合わない場所から整理を進めるのは合理的だ。

 2005(平成17)年から始まった道路緊急ダイヤル(#9910)の存在も影響している。主要キャリアからどこでも繋がるこの仕組みがあれば、物理的な拠点を1kmごとに設置し続ける必要性は薄れる。老朽化した設備の修繕に多額の資金が必要ななか、利用機会が激減した機材を維持し続けることは、次世代の高度交通システムへの投資を遅らせる要因にもなる。

 予算を有効に活用する観点から、戦略的な縮小は妥当だ。物理的な固定資産を減らし、デジタルによる管理へリソースを転換することは、人手不足が深刻化するなかでインフラ経営を続ける有力な手段となる。

 だが利用機会が減ったとしても、物理的な非常電話を欠かすことはできない。安全を守る上では確実な動作が求められるからだ。スマホの保有率が高くても、不測の事態で機能しない可能性は残る。

 特にトンネル内では200m間隔を標準とし、対面通行の場所では千鳥配置を採用するなど、緻密な安全対策が施されている。騒音下でも明瞭に通話できるボックス型を基本とし、スペースの制約がある場所には壁掛け型を置くなど、現場の状況に合わせた構成が取られている。

 こうした設計には利用者の心理的負荷を抑える狙いもある。緊急時にパニックに陥ると、スマホのロック解除やアプリ操作は困難を極める。受話器を上げるだけで場所が特定され、管制室と即座に繋がる仕組みは、操作の迷いをなくす。この数秒の差が現場の混乱を早期に収束させ、大規模な事故損失を防ぐ。

 多様な利用者への対応も欠かせない。設置高さを従来の1.2~1.5mから、車椅子利用者などが使いやすい0.8~1.2mへ下げる例が増えている。故障や事故、救急、火災の対応をイラストや日本語、英語で表示したボタンを備えた機材も普及している。

 こうした配慮は特定の層を切り捨てず、社会全体の利益を最大化する役割を果たす。物理的な実体があるからこそ得られる信頼は、デジタル技術だけでは補えない価値を持っている。

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