高速道路に「非常電話」が1kmごとに設置されている理由――スマホがあるのに、なぜ必要? ドライバーが知らない安全対策とは
日本の高速道路には、スマホ普及率98%でも約1km間隔で非常電話が設置される。事故や災害時、固定拠点から即座に管制室へ連絡可能なこの仕組みは、年間維持費2000億円超でも安全の投資価値を示す重要なインフラだ。
議論の核心

誰もがスマホを持つ現代では、物理的設備の維持は不要だという効率性の視点がある。高速道路ではETCの普及にともない、本線上の料金所が次々と廃止された。時代に合わせてインフラの構成を変えることは、限られた資源を有効に使う上で自然な判断だ。
存在価値が薄れたものを取り除き、より現代的なサービスに投資を向けるべきだという考えは理解できる。
だが安全確保の視点も根強い。通信が遮断される最悪の事態を想定すべきだ。日本は災害が多く、公衆通信網の脆弱さも経験から理解されている。非常時がいつどこで起きるかは予測できない。
回線が混雑してスマホが使えない状況でも、管理センターへ直結する独自の連絡ルートを確保しておくことは、道路の信頼性を守る基本となる。
焦点となるのは情報の正確性と対応コストの正当化だ。スマホ通報は場所の特定に手間取ることがあるが、あらかじめ場所が決まった通信手段なら、管制室は即座に現場を把握でき、判断ミスを減らせる。
高速道路では管制室が通報を受けて関係機関につなぐ間接連結方式が主流だが、一部のトンネルなどでは、利用者が通報先を選ぶ直接連結方式も運用される。こうした仕組みを維持し、点検や人件費をかけ続けることが利用者全体の利益に見合っているのか。
厳しい財政のなかで、この費用を安全への投資として受け入れるのか、それとも運営負担として削るのか。この判断はインフラ運営の方向性を左右する重要な問題だ。