「給油できる店がない」 ガソリンスタンド「ピーク比55%減」の現実、EV充電器だけでは支えきれない地方インフラの危機
物流と防災の空洞化

スタンドが担ってきた役割は、燃料を売ることにとどまらない。長距離を走るトラックの軽油を供給し、冬場にはお年寄りのもとへ灯油を届ける。あるいは田畑を耕す機械を動かす燃料を賄う。こうした営みは、そこに店があり、人が根付いていたからこそ続いてきたものだ。
これらはどれも、日々の暮らしや産業を動かすために欠かせない。もし拠点が姿を消せば、配送トラックは給油のために遠回りしなければならなくなる。これは走行距離が無駄に伸びるだけでなく、排気ガスを増やし、道を傷め、さらにはドライバーの休みまで削ってしまう。社会全体が余計な負担を背負い込むことになるわけだ。物流の効率化が厳しく求められるなかで、こうしたしわ寄せが地域に押し付けられれば、経済そのものが回らなくなる恐れがある。
災害への備えも無視できない。多くの店は、停電時でも動く発電機を持ち、緊急車両を助ける場所として働いてきた。この働きは、特定の誰かではなく、その街に住む人皆の安心につながっている。これまで役所は、こうした役割を民間に任せきりにしてきた面がある。本来なら公が守るべき価値を、いわば無償で借りてきたようなものだ。もはや経営の努力だけでは立ち行かない今、この見えない恩恵にどう対価を払うかが問われている。
拠点が消えた穴を、いったい誰が埋めるのか。住民か、運送会社か、それとも余裕のない役所か。民間の店を公の力で支えようとする動きもあるが、お金のない地方では現実は厳しい。これは、個々の店の経営がうまいか下手かという話ではない。エネルギーを届ける仕組みを、民間の儲けだけに任せるのではなく、皆で守るべきサービスとして捉え直せるか。その枠組みが今、問われている。代わりとなる場所がないままに今の形が壊れてしまえば、地域そのものが立ち行かなくなるだろう。